研究課題/領域番号 |
26380324
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
澤田 充 日本大学, 経済学部, 教授 (10410672)
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研究分担者 |
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 教授 (80361856)
坂井 功治 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80548305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 政治経済学 / Political connections / Corporate finance |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の企業や産業の詳細なミクロデータを用いて、政治的要因が企業行動やパフォーマンスに与える影響を実証的に分析するプロジェクトである。昨年度から企業が政治とつながり持つことにどのような含意があるかについて1920-30年代の金融市場のデータを用いて評価する研究に重点をおいている。昨年度は基本的な分析を行ったが、今年度はさらに深い実証分析を行った。具体的には、上場企業全体をサンプルとした場合、政治的つながりが株価収益率に対して強い影響を与えていなかった原因を明らかにすることを試みた。第一に、本研究では、政治的つながりを持つイベントして選挙に着目しいているが、選挙結果が事前に予想されてしまった可能性について検証を行った。具体的には、当選者と次点の得票率が僅差である選挙区に絞った分析を行っている。分析の結果、当選者と次点の得票率が僅差の選挙区に焦点を当てても、政治的つながりの株価収益率への強い影響は観察されなかった。第二に、政治的つながりが企業のパフォーマンスに与える影響に関するチャネルをより明示的にするために、政治家の属性に焦点を当てた考察を行った。具体的には、政治家役員の所属政党を調査し、企業が政友会とつながり持った場合と民生党とつながりを持った場合で、株価収益率に違いが表れるか検証を行った。分析の結果、両者に強い違いは観察されなかった。第三に、規制産業と非規制産業で影響が異なる可能性について検証を行った。分析の結果、新たに企業が政治とつながりをもった場合(選挙前には、役員メンバーに政治家役員はいなかったが、選挙後にメンバーのうち少なくとも一人が選挙に当選した場合)、非製造業では正の効果が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政治的要因と金融市場に関する研究は、昨年度、ディスカッションペーパー「Measuring the Extent and Implications of Corporate Political Connections in Prewar Japan」として発表し、それを今年度、日本金融学会などで報告し、多くの研究者から有益なコメントを得た。それらに基づき論文を改訂し、国際学術誌に投稿している。 一方で、他のプロジェクトについては、上記の研究に重点を置いたことからデータ整備などが少し遅れている。ただし、上記のプロジェクトを進める中で、1920-30年代は企業と政治のつながりが非常にクリアーにとらえることが明らかになったため、この時期の研究に重点を置くことを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、政治的要因と金融市場に関する研究は、国際学術誌から改訂を求められているが、適切に改訂し、これらを確実に公刊することを試みる。また、上記の1920-30年代の研究を通じ企業と政治のつながりが戦前期に非常に強かったことが明らかになり、さらにこれらの研究を銀行産業にまで広げることが有益だと考えられる。戦前期において株価のデータが利用可能な銀行は限られているので、パフォーマンスを測る際に工夫が必要である。財務データや退出データなどを利用して、政治的要因が銀行のパフォーマンスにどのような影響を当てるかについて実証分析を行う。今後、研究分担者と連携をはかりデータの整備や具体的な推計モデルの考案を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が当該プロジェクト以外の仕事に予想以上に時間をとられ、当初予定していた海外出張などを行うことができかかったため、見込みよりも研究費の消化が進まなかった
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、プロジェクトの最終年度ということもあり、エフォートを昨年度よりも高める予定である。研究アシスタントの雇用や研究出張などを通じて当初見込まれていた予算通りに研究費を消化する予定である。
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