研究課題
ナッシュ均衡に対応する値を除けば、推測的変動は次の調整過程を反映している。第一はライバルの需要曲線の位置が無知な場合、一致推測的変動は均衡に至る調整過程を近似的に表わしている。一致推測的変動はライバルの反応についての予想が現実と一致する場合である。本研究ではこの均衡の特徴を次のように見出した。第1に数量か価格かといった企業の選択変数に関係なく同じ均衡が成立する。第2にライバルの需要曲線の位置がわからないとき、どの企業も自らの需要を実際よりも過大に見せることによって、ライバルの生産量を減少させようとするかもしれない。しかし一致推測的変動均衡ではライバルをミスリードさせるインセンティブは存在しない。反対に、クールノー均衡ではライバルを偽るインセンティブが存在する。推測的変動はもう一つの調整過程を反映しているかもしれない。Dockner [1972]は生産量調整モデルで、静学的な推測的変動が動画的調整過程を反映することを示した。本研究ではDockner [1972]を非同質財あるいは価格モデルに拡張して、推測的変動と生産量調整過程との対応関係を確認する。静学モデルで使われる推測的変動が意味するものは短期的な企業行動であって、長期的な企業行動を表わすものではない。これはシミュレーションと次の実証分析からも明らかである。本研究では同一時点でのライバルへの影響を表わす静学的推測的変動と将来のライバルへの影響を表わす動学的推測的変動を組み込んだ離散型モデルを構築し、1983年から2010年までの軽乗用車市場に適用した。従来の静学的モデルによる推定と比較して、はるかに理論的に想定された値に近い結果が得られた。これに対して静学的モデルによる推定は他の多くの実証分析と同様に理論的にはありえないような結果となった。
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経済集志
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運輸と経済
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