産業と企業の異質性を考慮した独占的競争の一般均衡モデルを構築し,市場均衡と最適配分の定性的・定量的分析を行った。はじめに,一般的な効用関数と生産性分布関数を用いて定性的な分析を行い,市場均衡と最適配分の乖離を特徴づけた。特に,産業間の歪みは,subutilityの弾力性の加重平均とupper-tier utilityの弾力性に依存することを明らかにした。さらに,効用関数と生産性分布関数を特定化し,subutilityの弾力性の加重平均とupper-tier utilityの弾力性をパラメータに置き換えて定量的な分析を行った。イギリスとフランスのデータからパラメータ値を得ることにより,市場の歪みの大きさを明らかにした。本研究は,Dixit and Stiglitz (1977)以降,国際貿易,経済成長,都市経済などさまざまな分野で理論的に分析されてきた市場均衡と最適配分の乖離を,各国で容易に入手可能なデータを用いて定量化する手法を開発した点において意義がある。
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