研究課題/領域番号 |
26380329
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
斉藤 都美 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (00376964)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自動車保険 / 外部性 / ピグー税 / 走行距離 / 交通事故 |
研究実績の概要 |
タクシー事故が1990年代に急増した事実を踏まえ、それに対する政策的対応方法について検討した。交通事故対策には道路設備の改善、警察による取り締まり、罰則の強化、安全規制の厳格化など多様な政策手段が存在するが、ここでは外部性を内部化するための課税方法について検討した。外部性を内部化する手段としては真っ先にガソリンへの課税が想起されるが、これにはいくつかの問題点があることが知られている。とりわけ燃費の良い車の所有者に負担が軽いなど、リスクとは無関係な要因で課税されることは公平性・効率性の両面で問題がある。そこで代替的手段として、pay as you drive (PAYD)自動車保険への課税が提案されている。これは自動車保険料に走行距離が反映された自動車保険を普及させ、それに対して課税する方法である。自動車保険はすでに契約者のリスク属性を保険料に反映させているため、それへの課税は効率的かつ公平な課税となり得る。 こうした理論的背景を踏まえ、私は日本でガソリンに課税した場合とPAYD自動車保険に課税した場合とで、交通事故発生や交通量にいかなる違いが生じるかについて実証的研究を行った。具体的には都道府県レベルの公開データを用いて、全国一律のガソリン税をかけた場合とPAYD自動車保険に課税した場合とでの政策の効果を比較した。その結果、現状の走行距離から社会的に望ましい走行距離までの削減幅を100とすると、ガソリン税では走行距離の短い鳥取県では最大111だけ余計に削減され,走行距離の長い愛知県では最大84までしか削減されないことがわかった。個人レベルでは走行距離のばらつきがはるかに大きいことから、事故外部性を内部化する際の具体的手段としては走行距離その他の異質性を考慮できるPAYD自動車保険への課税が望ましいと結論づけた。その際検討すべき諸問題についても議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国一律のガソリン税とPAYD自動車保険への課税との比較は、本研究課題の中心的なテーマの一つであるが、現時点ではデータ収集・推定・シミュレーションを終え、論文にまとめる最終段階まで終了している。このためおおむね順調に進展していると判断した。ただしこれ以外のテーマについてはこれから取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
全国一律のガソリン税とPAYD自動車保険への比較は分析としては終了しているため、今後はそこで得た知見を広める努力をする。 また今後は次のような研究を予定している。まずタクシー市場における近年のIT技術進展に伴い、市場競争がどのように変化しているか現状を把握するため、資料収集や実地調査を実施する。そのうえで新技術の登場が望ましい規制のあり方をどう変えるかについて検討する予定である。その際、あくまで政策提案に結び付けることを目的とし、内容的に偏ったり手法的に定量分析に限定することはせず、必要に応じて内容・手段をフレキシブルに採用して研究していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力にアルバイトを依頼する予定だったが、自ら入力したため結果として人件費が不要になった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は消耗品の購入などで使い切る金額であるため、基本的には当初の計画通り使用する予定である。
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