研究課題/領域番号 |
26380331
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
碓井 健寛 創価大学, 経済学部, 准教授 (80364222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 路上生活者 / 不法投棄 / 空間計量経済学 / 家庭ごみ / パネルデータ分析 / 資源ごみ持ち去り禁止条例 / 国際情報交換 / イギリス |
研究実績の概要 |
歴史的背景として、空き缶拾いに代表されるような都市雑業を、路上生活者が担ってきた。これまで自治体の回収する空き缶は無主物(誰のものでもない)とされていた。そのため路上生活者が収集の担い手として行政当局や住民も暗黙の了解ができていた。ところが資源買い取り価格が高騰しはじめたため、空き缶を組織的に大量に持ち去る業者が現れてきた。そのため自治体では空き缶持ち去り禁止条例を導入し、持ち去り業者を取り締まるようになった。 しかしその条例の本来の目的に反して、規制の対象ではなかった路上生活者が指導されるという報告が挙げられるようになった。その理由として行政の担当者に歴史的な経緯を知らないものがいたこと、そして、新しい住民からの通報があったため行政が動かざるを得なかったことが挙げられる。 路上生活者の多い地域では、特定の業者による不法投棄が問題となっている。ゴミ捨て場が散乱しているため、不法投棄者は不法投棄が違法行為であるという感覚が鈍くなり、周辺地域からゴミの不法投棄が行われてしまっていると考えられる。 行政当局は、周辺住民の声を受けて、路上生活者を排除し、再開発したいという思惑がある(例:天王寺駅前の公園の有料化という名目での路上生活者の排除はジェントリフィケーションの一例)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では「有料化を実施している自治体およびその住民、空き缶回収者に対する聞き取り調査をおこない、自治体や国が実施する制度の影響がどのような影響をもたらすのかをアンケート・ヒアリングする。これらの主体が認識している経済的インセンティブの実態について明らかにするとともに(ケーススタディ)、現実に即した分析を行うための基礎資料とする。」とあったが、研究代表者が予定通り、路上生活者への聞きとり調査を行うことで、必要な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初の計画どおり「一般廃棄物のリデュースとリユースを促進する政策パッケージを考察し、その効果について既存データを用いながら評価する。特に低所得者を中心とする経済主体がどのように反応するのかに着目する。空間計量経済分析によって、有料化・税を導入した場合の不法投棄の地域間のスピルオーバー効果を検証する。統計データによって、所得の違いが不法投棄行動に及ぼす影響を確認する。また自治体の野宿生活者(ホームレス)の空き缶収集に対する取り締まり厳格化によって、野宿生活者の立地がどのように変化するのかを統計データによって検証する。」という研究目標を達成することである。 また、昨年イスタンブールで行われた国際会議で、イギリスの研究者とうち合わせを行い、共同研究を行うことになった。具体的にはイギリスの事業系ごみが家庭ごみに混入されるという不法投棄問題を検証するために、小規模自治体のデータを調査し、空間計量経済分析のアプローチで分析をおこなう。 さらに、路上生活者に対する、隠れた行政の規制を調査するために、被災地周縁を調査対象とした資源ごみ持ち去り条例について調査を追加的に行うこととする。被災地の周辺都市では、震災により職と家を失った人々、復興特需に沸く被災地で仕事を得ようと移住したが雇い止めにあった人々など、行政の把握しきれない状況で、ひとびとを路上生活へと押しやる圧力が見られる。そのため、現状を把握するために被災地、被災地周縁の都市部を中心に調査を行い、現状を把握することをあわせて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究アルバイトの仕事が、当初想定した以上に効率的にできたため、その分予算を節約できた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は、計量経済分析を行うため、処理能力の高いコンピュータと統計専用アプリケーションを必要としている。国際会議での報告のため海外出張を行う。同時に、イギリスの研究者との研究会議も国際会議で行う。引き続き、被災地と被災地周縁都市でのフィールドワークおよび、路上生活者の聞きとりとして、横浜、川崎、東京などを中心にフィールドワークをおこなう。そのための旅費を使用する。
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