本研究の目的は、各国が独自に環境規制を行う初期段階から、どのようなステップを経て最終的に望ましい世界規模での排出源の一律規制に向かうのかを、貿易自由化の進展と関連させて考察することである。グローバル競争の中、公正な競争と炭素流出の防止の観点から、各国は産業(セクター)ごとに異なる環境規制を課す傾向がある。しかし、汚染の限界削減費用が異なるため非効率な環境規制である。 研究の初年度であるため、まずどのような理由から各国のセクターごとで環境規制の水準に違いが生じるのかを調査した。そして、排出削減の総費用を最小化する一律規制に移行するには、どのような環境規制の調和方法が望ましいのかを、来年度以降、検討する準備をした。 具体的には以下の通りである。国内外の環境政策の実態調査や資料収集などを行い、各国のセクター別環境規制の特徴を把握する。その調査結果を踏まえた上で、戦略的相互作用を重視した貿易と環境の基本モデルを構築する。モデルの特性を十分に理解して基本的な結果を導出することに努めた。 各国は様々な事情を考慮の上、環境規制を戦略的に実施していると考えられる。それはセクター別環境規制として具現化されているといえる。よって、各国のセクター別環境規制の特徴について理解を深めることで、各国の環境戦略が見えてくる。特に、国際競争に直面する汚染集約的なセクターでは、炭素流出の懸念や公平な国際競争の確保のために、他国の環境技術・規制の水準に応じて、他の産業(典型的には非貿易財産業)より戦略的に緩めの環境規制を課す可能性が高い。
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