2017年度では、日本と中国の地域間格差の分析を中心に研究を行った。具体的には、第一に、日本と中国の政治・経済・社会に関する長期的な資料及びデータを収集・整理した。これらの資料とデータを用いて、戦後以来の日本と改革開放以来の中国について政治制度の推移、国民経済の発展、社会構造の変化、地域政策の変遷などに関して考察と比較を試みた。 第二に、日中両国の地域間格差について、政治制度、経済発展及び社会構造の共通性と相違性から分析を行った。その結果、地域経済成長に関しては、日本の太平洋沿岸地域と中国の沿海地域など一部の地域が先に発展しその後その他の地域も追随していくことが共通に見られたことを明らかにした。また、戦後日本の地域間格差は最初に拡大していたが後に縮小に転じていったことを踏まえて、中国の地域間格差も同じような経路を辿っていくのではないかと予測した。すなわち、現在においては中国の地域間格差が拡大傾向にあるが、市場経済がさらに進展すれば、地域格差に対する政府の是正政策も効果を発揮していくために次第に縮小傾向に変わっていくことが予想される。 これらの比較と分析の結果をもとに、日本と中国の地域経済成長及び地域間格差に関する研究論文と図書の原稿を作成した。論文は学術専門誌に投稿しており図書は出版社と出版のための交渉を行っている段階にあるために、現時点では発表されていないが、比較的早い時期に発表・出版されることと思われる。
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