研究課題/領域番号 |
26380342
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
松岡 憲司 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40141668)
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研究分担者 |
佐々木 淳 龍谷大学, 経済学部, 教授 (10244766)
山西 万三 龍谷大学, 経営学部, 教授 (20619225)
辻田 素子 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40350920)
木下 信 龍谷大学, 経済学部, 講師 (60396265)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 老舗企業 / イノベーション / 経営成果 / 収益性 / 家族経営 / 古文書 |
研究実績の概要 |
研究計画の中で掲げた2つのアプローチをそれぞれ進めた。第1の調査機関が集めたデータによる分析については、帝国データバンクより京都市内の老舗企業200社と比較のための非老舗企業100社のデータを購入した。企業概要データにより1993年から2013年までの売上高、利益、従業員数の増加率を求め成果指標とした。財務データからは自己資本比率、負債比率、流動比率、売掛金比率を求め安全性指標とした。収益性については売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、株主資本利益率、総資産利益率を求めた。取引構造については、仕入れ先、販売先の各上位5社について1993年度と2013年度を比較して、変化の有無を調べた。また家族経営の状況を見るために、社長持ち株比率、同族持ち株比率を調べた。これらの指標を老舗と非老舗の間で比較検討した。これらの結果は木下信・王鵬「京都市内の老舗企業に関する実証研究」というディスカッション・ペーパーにまとめた。 第2の老舗企業の古文書によるデータベース作製は、1871[明治4]年創業の石田老舗の史料調査を、2回にわたって実施した。その際,同社の私家文書である6点の古文書(近現代)を収集し,写真撮影を行った。古文書6点の内訳は、帳簿4点(「明治丗五年一月吉日 原料買入帳」,「昭和十四年十月吉日 判取帳」,「判取」,「判取」)と名簿2点(「明治四十四年九月再調 得意人名簿」,「明治四十四年拾月調 京都菓盛会 会員名簿」)である。古文書の検討によるデータベース構築に向けた最初のステップとして、名簿2点を判読のうえ、戦前期の名鑑類や人名録との照合を試み、その成果を佐々木淳「石田老舗資料(「明治四十四年九月再調 得意人名簿」,「明治四十四年拾月調 京都菓盛会 会員名簿」)の検討」(『龍谷大学経済学論集』第54巻第1・2号,2015年3月)として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画ほぼ予定通り進んでいる。 ①文献研究については、龍谷大学図書館が所蔵する社史コレクション(長尾文庫)に所蔵されている京都老舗企業の社史を分担して分析した。 ②帝国データバンクより購入した企業データにもとづいて、老舗企業間の取引構造を分析した。同データベースでは購入先、販売先それぞれ上位5社が掲げられているが、必ずしも関係性が強くなくソシオグラムの作製には至れなかったが、取引先の変更度合いについての老舗と非老舗間の比較分析を行うことができた。 ③老舗企業に残された明治以降の経営資料(売掛帳や判取り帳など)の調査については、1社の資料調査と判読、分析を行うことができた。ただ判読と分析に多大な時間がかかり、1社のみの調査となった。 ④当初計画にはなかったが、ヨーロッパのファミリービジネスを研究している研究者(University of Glasgow, Adam Smith Business SchoolのDr Alfredo D’Angelo)との交流が始まった。意見交換や論文の交換などを行い老舗研究の国際的展開への展望が開けた。
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今後の研究の推進方策 |
①老舗企業に対する聴き取り調査・企業データの分析:平成26年度に引き続き、伝統産業系および機会産業系の老舗企業の聞き取り調査を実施する。特に「意味の革新」に取り組んでいる老舗企業の事例集を作製したい。さらに祭りなどを通じたインフォーマルな関係の分析を行い、京都老舗企業を中心とする地域イノベーションシステムを取りまくソーシャル・キャピタルの特徴を明らかにする。 ②金融機関に対する聴き取り:本年度に新たに取り組む課題として金融機関が老舗企業、特に老舗企業のイノベーションについてどのように評価しているのかを聴き取りにより調査する。 ③前年度に行った調査会社データの分析:平成26年度に企業データにもとづいて作製した成果指標を被説明変数とした回帰分析を行い、企業成果にとって大きな影響を与える要因を老舗と非老舗の間で違いがあるかどうかを明らかにする。 ④公設試験場と教育機関:地域イノベーションシステムの「知識の創造・普及サブシステム」の構成要素としての公設試験場と教育機関について、聞き取り調査を実施し、京都の老舗を中心とする地域イノベーションシステムの特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査旅行を当初予定していた回数だけ実施することができなかったこと、また資料整理を担当してくれる人を見つけることができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
各分担者ごとの繰り越し残高を、各分担者の本年度経費に充当する。 松岡と辻田については、昨年度始まった老舗研究の国際交流のための海外出張費に一部を充当する計画である。
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