研究課題/領域番号 |
26380344
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
大堀 秀一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70378959)
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研究分担者 |
紀國 洋 立命館大学, 経済学部, 教授 (90312339)
友田 康信 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30437280)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 参入阻止 / 環境政策 |
研究実績の概要 |
企業はなぜ自主的に環境保全への取組みを行うのであろうか。これまでの既存研究による説明は、①政府による公的な規制の回避、及び②企業の社会的責任やブランドイメージの向上、の二つに大きく分類できる。これらの説明は一定の説得力を持つが、想定可能な企業の環境保全に対する自主的取組みのインセンティブが、すべて説明されたわけではない。本研究の目的は、既存研究で得られた上記のインセンティブ以外にも、むしろ企業は潜在的なライバル企業の参入を阻止するために、積極的に環境保全への自主投資を行う場合があり得ることを明らかにすることである。 モデルは以下のとおりである。既存企業1社、潜在的な新規参入企業1社、及び政府が存在する単純な参入ゲームを考える。新規企業が参入する際には固定費用がかかるとする。第1段階では、既存企業が汚染削減水準を決定する。新規企業が参入する場合、既存企業の決定後に汚染削減水準を決定する。すなわちシュタッケルベルグ競争を行う。第2段階では、政府が環境税率を決定する。第3段階では、既存企業が生産水準を決定する。新規企業が参入する場合は、既存企業と同時に生産水準を決定する。すなわちクールノー競争を行う。 以下の結果を得ることができた。①既存企業は潜在的なライバルの参入を阻止するために、自発的に汚染削減水準を高める。また、限界削減費用が高い場合、既存企業は新規企業よりも汚染削減水準を先んじて高める。②新規参入がない場合の最適環境税は負、つまり環境補助金となる。これは独占に伴う過少生産による厚生損失を改善させるためといえる。③限界削減費用が高い場合、参入がない場合の社会厚生のほうが参入の可能性がある場合の社会厚生よりも高くなる。一方、限界削減費用が低い場合は、参入の可能性がある場合の社会厚生は参入がない場合の社会厚生よりも高くなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究結果は、環境経済・政策学会2015年大会(京都大学)において報告を行っている。また、当該の学会で得られたコメント等を基にいくつかの修正を行った。現在、国際査読誌への投稿を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、企業は政府が環境政策を決定する前に自主的な環境改善の取組を決定することが、潜在的なライバルに対する参入阻止として機能する可能性を、理論的に示すことができた。今後の研究の方向性としては、企業と政府間の非対称情報などを考慮した、より一般的な設定を想定したケースを考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効果的に使用するには次年度執行が望ましいと判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度における研究成果の発表のため、国内の研究会及び国際会議での発表や国際査読誌への投稿を行う予定である。その際、国内・海外出張旅費や国際誌への投稿準備としての英文校正費が必要となる。
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