研究課題/領域番号 |
26380349
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
栗田 高光 福岡大学, 経済学部, 教授 (20454928)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 時系列分析 / 時系列データ / 経済政策 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、研究目的および研究実施計画を踏まえ、以下のような研究を行った。 まず、昨年度に引き続き、構造変化が内在する非定常時系列データを正確に分析することを目的に、統計学および計量経済学における理論面での研究を前進させた。特に、こうしたデータを分析する際に重要となるパラメーター安定性検定に関し、理論的研究を行った。具体的には、為替レートや物価指数の時系列データの特性を踏まえながら、多変量共和分自己回帰モデル(CVARモデル)の枠組みの中でパラメーター安定性検定を新たに考案し、その検定統計量の漸近分布を導出した。この漸近分布を、コンピューター・シミュレーションにより近似化する試みも併せて行った。 また、考案した検定統計量を、実際の経済政策分析などに利用していくことを念頭に、モンテカルロ法に基づくコンピューター・シミュレーション分析も数多く行った。こうしたシミュレーション分析により、データ数が有限の場合であっても、パラメーター安定性検定が有用であることなどを確認した。実用性を持つこの検定統計量は、今後の本研究全体の取りまとめにおいて、構造変化の有無などを計測する上で重要な役割を果たすものと期待している。 上記の理論的研究の成果を踏まえ、経済政策分析に利用可能なCVARモデルを推計することを目指し、日本、アメリカ、ニュージーランドなどの経済・金融時系列データを詳細に分析した。為替レートと国内物価に関する実証分析において、一定の研究成果を上げることに成功した。 これまでの研究成果を取りまとめた上、国内学会にて研究報告を行うとともに、時系列分析の分野で多くの研究者がいるイギリスを訪問し、セミナーにて研究報告を行った。研究報告などを通じ、多数の研究者と有益な情報・意見交換を行うことができた。これらの出張で得られた知見を、今後の研究に着実に反映させていく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的および研究実施計画におおむね沿った形で、研究が順調に進捗していると評価している。統計理論に関する数学的考察、コンピューター・シミュレーション分析、実際の時系列データを用いた実証分析という三点において、研究は着実に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
コンピューター・シミュレーション分析をさらに精緻に行っていくとともに、これまで実施した理論的研究などを踏まえつつ、また経済政策分析に資する実証研究を志向し、為替レートと国内物価の相互依存に関するCVARモデル分析を着実に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた海外出張を延期し、研究成果の取りまとめ等に時間を割いたことに加え、シミュレーション分析を既存のコンピューター機器で実施したため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、海外出張をして学会報告やセミナー報告を行い、研究成果の海外発信をより強化していきたい。また、研究の最終段階に入る中で、コンピューター・シミュレーション分析の高度化・複雑化が予想されることから、そうした状況下で最新のコンピュータ機器などの設備を導入していきたい。
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