研究実績の概要 |
平成30年度においては、研究目的および研究実施計画を踏まえ、以下のような研究を行った。 昨年度に引き続き、構造変化を含む非定常時系列データを精緻に分析することを目的に、統計学および計量経済学における理論面・実証面での研究をさらに前進させ、所要の成果を得た。成果のうち特に重要なものは、こうした非定常時系列データを分析する際に重要となるパラメーター安定性検定に関し、理論面および実証面での研究を完成させたことである。より具体的には、為替レートや物価指数の時系列データの特性を踏まえつつ、共和分多変量自己回帰モデル(Cointegrated Vector Autoregressive Model, 以下CVARモデルと略記)の枠組みの中でパラメーター安定性を検定する手法について、理論および実証の双方の観点から検討を重ね、研究を完成させた。漸近理論により得られた統計量の漸近分布を、コンピューター・シミュレーションにより近似化する作業を完遂するとともに、考案した手法を日本の金融時系列データの分析に適用し、経済政策分析における手法の有用性を確認した。 このような研究成果とともに、国際共同加速基金に基づく国際共同研究の成果を用い、経済政策分析に利用可能なCVARモデルを推計することを目的として、日本やイギリスの経済・金融時系列データを精緻に分析した。為替レートと国内物価に関する実証分析において、経済政策分析に資する研究成果を上げることができた。 国際学会にて、これまでの研究成果に関し報告を行うとともに、研究成果を複数の論文に取りまとめ、ワーキングペーパーとしてウェッブ上で公表した。ワーキングペーパーの一つは、査読付き英文ジャーナルに受理され、出版された。現在、残りのワーキングペーパーを査読付き英文ジャーナルに投稿中である。
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