本研究は、ミャンマーにおけるドル化の実態を調べ、同国がドル化を解消する(脱ドル化する)ための課題を明らかにすることを目的とした。 本研究では、これまで非公開であった外貨預金についてのデータを中央銀行から入手し、2000年代はじめにのミャンマーで、少なくともマクロ指標上はドル化が進んでいたことを明らかにした。一般的なドル化指標である「広義の通貨残高に占める外貨預金の割合」が2001年には24.5%に達していたことが分かった。しかし、政府が保有する外貨預金が見かけ上のドル化指標を高めており、その一部が中央銀行に移管されるとドル化指標も13.1%(2014年)まで低下している。 さらに、本研究では、民間部門における外貨資産保有について調べるため、輸出入企業240社をサンプルとする企業調査を行った。この調査のデータから、企業のバランスシートに占める金融資産が、売掛金や在庫と比べると限定的であること、かつ外貨預金は貿易決済・両替の過程で一時的に保有されていることが分かった。ミャンマーでは非公式な外貨両替の利便性が高く、そうした両替を利用するために外貨預金が持たれている。企業調査サンプルの半数以上の企業が、銀行での両替の経験がなかった。したがって、企業の外貨資産の保有を減らすためには、銀行の外貨業務の利便性を高めることが有効と考えられる。 本研究の成果として、ドル化についてのミャンマーと近隣諸国の比較研究の単行書、外国為替制度の変遷についての単著単行書、および非公式為替市場の計量分析の雑誌論文2編を公刊した。
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