本年度は研究の最終年として、前年度の論文「CCRCとPACEの統合による高齢者包括ケア」刊行時には課題として残されていたCCAH(在宅CCRC)の実態を解明し、「CCRC(継続的ケア付高齢者コミュニティ)の最新モデルCCAH」というタイトルで論文にまとめたことが大きな成果といえる。 この論文の意義はCCAHが高齢者の自宅でCCRCと同様の伝統的なサービスや支援を提供しながら在宅生活の継続を可能にしていていることを明らかにした点にある。CCAHでは、加入者は入会金と月額利用料を負担すれば、健康状態が悪化しても自立を維持しながら自宅で暮らし続けられるように包括的な介護サービス一式を提供されている。急速な高齢化にはCCRCやPACE等を含めてそれらの長所を取り入れた手頃な高齢者包括ケアモデル(例えばCCAH)を作り改善していく必要がある。とはいえ、CCAHがPACEを十分に活用している実例はほとんど見られず、在宅での包括ケアを実現しながら手頃な費用で提供することは容易ではない。州の冷淡な態度や米国民の老後介護費用に対する無知もCCAHの発展を阻害している。しかも保険会社のそれとは異なり、「無認可の介護保険」ともいわれるCCAHは高リスクを孕んでおり、スポンサーであるCCRCの入居者資産(入居金等)を毀損し兼ねない危険性を抱えていた。この論文の重要性は「CCRCとPACEの統合」を目指すCCAHが包括的高齢者ケアを「施設と同様に自宅」にまで拡大することを試みている点と、その革新性ゆえに大きな課題も抱えている点を具体的に明らかにした点にある。 本研究は平成27年度と28年度に発表して2つの論文を通じて、「CCRCとPACEの統合モデルによって双方の長所を活かし得ること」を明らかにすることができたが、その順調な発展には克服すべき問題が残されていることも確認する結果となった。
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