研究課題/領域番号 |
26380358
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大石 亜希子 千葉大学, 法政経学部, 教授 (20415821)
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研究分担者 |
千年 よしみ 国立社会保障・人口問題研究所, 国際関係部, 第一室長 (00344242)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / アジア / 家族政策 / 母子世帯 / ワーク・ライフ・バランス / 格差 / 子育て世帯 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績は以下の通りである。第1に、前年度に引き続き子育て世帯の母親の就労パターンと子どもに対する時間的・経済的投資との関係について、とくに非典型時間帯労働に注目して分析を進め、論文を公刊した。この論文では、二親世帯と母子世帯の間の所得格差だけでなく、子どもの享受する親からの時間的なインプットの面でも格差が生じていることを示した。第2に、千葉大学独自の研究プロジェクトと合同する形で韓国・台湾・香港の家族政策の研究者を招聘し、千葉大学にて家族政策・移民政策・労働政策をテーマとするシンポジウムを2016年2月に開催するとともに国際比較に用いるデータについて検討を行った。第3に、女性労働のM字型就労パターンの観察される日本と韓国、および育児期の非労働力化がほとんどみられない台湾・香港の4か国について家族政策・労働政策を中心として国際比較研究を行い、2016年3月に国立台湾大学で開催された国際会議にて報告をした。台湾と香港においては豊富な移民家事労働者の存在が女性、とくに高学歴女性の長時間就労の背景にあり、そのことが子育て世帯間の格差拡大につながっている可能性が示唆された。第4に、日本・フランス・スウェーデン・イギリスの男女について内閣府の実施した国際比較調査データの個票を用いてワーク・ライフ・コンフリクトの生じる背景について分析を行った。予備的な分析の結果では、いずれの国でも週労働時間が40時間を超えるとワーク・ライフ・コンフリクトが高まること、また、他国と異なり日本では20代、30代の若い層ほどワーク・ライフ・コンフリクトを持つ傾向にある。第5に、子どもの貧困とワーク・ライフ・バランスの観点からイギリスの家族政策、労働政策についてサーベイを行い、前年度に実施したヒアリング調査の結果と合わせて論文を公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度前半に健康面の問題が生じたため7月に予定していたNBER Summer Institute への参加を見送った。また、21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の目的外申請を28年度に繰り越した。 その一方で、アジアの研究者との共同研究は順調に進んでおり、また、当初予定していなかったヨーロッパ諸国を含む国際比較データの個票が利用可能になるといった進展もみられている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、アジアおよびアメリカの研究者と連携して家族政策・労働政策についての国際比較研究およびデータ共有を進める。アジアの研究者との共同研究の成果は英文書籍として出版する計画が進んでいる。 さらに、21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の目的外申請を行い、大規模調査データに基づく、子育て世帯間の所得格差の実態について分析を進める。また、子どもと過ごす時間という面からの格差についても、社会生活基本調査などの個票に基づく分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度前半に生じた健康上の問題から7月に予定していたアメリカ出張を取りやめたこと、および海外研究者招へいについて千葉大学独自の研究プロジェクトとの共同開催としたため旅費・滞在費についての負担が生じなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には海外での学会発表を3回予定しているため外国旅費として使用する予定である。
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