研究課題/領域番号 |
26380364
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
水野 利英 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (30181902)
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研究分担者 |
山田 航 兵庫県立大学, 公私立大学の部局等, 助教 (20722333)
車井 浩子 兵庫県立大学, 経営学部, 教授 (70275296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 介護労働 / 訪問介護員 / 主婦労働 / 高学歴介護職員 / M字型 / 介護福祉士 |
研究実績の概要 |
専業主婦の労働参加についての問題との関連で、専業主婦のパートが多い女性訪問介護員について、2010年の介護労働安定センターによる介護労働実態調査の個票を用いて、その概要、就業形態による意識の違いなどについて、分析を行った。その結果、非正規の場合、賃金より時間が融通することを重視することが明らかになった。また、働く上での悩みや不安・不満を因子分析を用いて分析したところ正規職員では長時間労働や低賃金が第1共通因子になったのに対して、非正規職員では、業務特性による健康不安と社会的評価が低いことが第1共通因子になった。 2010年の国勢調査の職業分類に介護サービス従事者と訪問介護従事者について、学歴別の全体的な構造を見るため、オーダーメード集計を用いて1歳刻みの学歴別の訪問介護員と介護職員の男女別学歴別の人数を入手し、介護労働安定センターの調査の個票データや介護サービス施設事業所調査などと比較して、検討した。 その結果、多くのことが明らかになったが、正規介護職員、特に高学歴正規介護職員に特に着目した。介護職員では男性の比率が比較的高く、その多くは30代以下で正規職員の比率が高い。しかし、2005年と比べると女性も含め高齢化している。大卒・大学院卒の正規介護職員については、男性のほうが殆どの年代について多い。特に女性の大卒・大学院卒の正規介護職員は23歳では2700人いるのに対し、43歳では250人しか存在せず、著しいM字型が存在することが明らかになった。 また共同研究者は2010年の介護労働安定センターの個票データを用いて経営管理的取組と就労継続の関係を、「介護サービスの提供における不安」の有無を通して分析した。その結果、介護福祉士の就労継続意向が有意に弱い中で、介護サービスの提供にあたって不安を感じていない介護福祉士に限れば就労継続意向が有意に強いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者の主要な問題意識の一つである専業主婦の労働参加の問題と関連付けて、専業主婦のパート参加が多い非正規訪問介護員について、個票データを分析することにより、意識や悩みを明らかに出来た。 また、国勢調査のオーダー・メード集計で得たデータにより、介護サービス従事者と訪問介護従事者について、非常に多くのことが明らかになった。このデータと個票を用いて分析をしている介護労働安定センターなどを比較することにより、データの偏りが明らかになるととも、国勢調査より細かい水準で介護関連学科と非介護関連学科との違いなどについても研究できる。大学・大学院卒の女性については、正規介護職員に非常に顕著なM字型が見られるなど、介護労働を忌避する傾向があるのではないか予想されるデータを得ることができた。 介護福祉士資格については、以前から資格保有者の離職意向が高いことが明らかになっていたか、介護サービス提供の不安との関連でより詳細な分析が得られた。 介護労働の一次的供給源の分析については、大学等については、共同研究者が博士論文を完成し、順調に進展している。外国人労働者については、送り出し国のヒヤリングが担当者の多忙などにより、翌年に先送りされている。
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今後の研究の推進方策 |
始めに今回、明らかになった、高学歴の介護サービス正規従事者で、30歳代から40歳代前半で、極端に少ないという問題と関連した研究を行う。一つの観点は、専業主婦の労働参加の問題との関係という観点から検討したい。一般に、大卒で専業主婦になった場合、労働に参加する傾向が低いということがいわれている。大学進学率、結婚率、出産率の推移も含め、一般的な傾向との比較が一つの課題になる。また、介護労働者については、大卒女子に焦点を当てるとサンプルが少なくなり、困難が予想されるが介護労働安定センターの個票データを用いて、意識や悩みなどについて検討したい。 個票データを持ちいた計量分析では、2009年の介護職員処遇改善給付金の効果や事業所レベルでの離職者数の決定要因などの推定を統計的方法の検討も加え、実施したい。 介護労働の一次的供給源のうち、学校については学部別の進路が学校基本調査のオーダー・メイド推計などで入手を検討する。こうしたデータが入手できれば、福祉系大学等の進路の推移とそれに影響を与える要因について、検討したい。 外国人介護労働については、送り出し国の事情、あるいは他の先進諸国の受け入れ事例について、ヒアリングを含め調査したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国人介護労働の送り出し国の調査として、インドネシア、フィリッピンでのヒアリング調査を予定していたが、担当研究者が本年度は多忙で実施されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、送り出し国の事例、他先進諸国の受け入れなどにヒアリングなどの調査を行う予定である。
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