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2017 年度 実施状況報告書

防災における市場の失敗と政府の役割の経済理論分析

研究課題

研究課題/領域番号 26380366
研究機関甲南大学

研究代表者

中川 真太郎  甲南大学, 経済学部, 教授 (20522650)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワードリスク削減 / 被害削減 / 共通リスク管理 / 公共財 / 外部性 / 公共経済学 / 防災 / 減災
研究実績の概要

研究代表者が7月13日にパリで報告した”Impacts of Misperceptions about Disastrous Events on International Security, the 18th Annual Meeting of the Association for Public Economic Theory”では、経済主体が協力して、災害のような不測の事態に備えるケースで、各経済主体が不測の事態における損失の規模を誤認する場合の影響を理論的に分析した。ここでは、誤認の理由として利益団体等の影響を想定した。もし、経済主体の行動に外部性がなく各自が個別にリスクに対応する場合、リスクに関する誤認は非効率な結果をもたらす。しかし、複数の経済主体が、公共財の自発的供給によって、被害確率を低下させたり、被害に対して公共財的自家保険を行ったりする場合、これらの誤認が公共財供給へのフリーライドによる非効率を相殺して、効率性を改善する場合があることを示した。また、社会的に最適な誤認の水準を示すとともに、誤認を引き起こす利益団体のロビイング行動を内生化したときに、最適な誤認を実現するような限界ロビイング費用が存在することを示した。この学会発表は国際政治の文脈でまとめているが、本研究成果は純粋に理論的なものであり、この成果は防災における家計間の共同的リスク管理問題における、災害リスクの誤認の分析にも適用可能である。
しかしながら、平成29年度は、この他には確たる研究実績を残すことが出来なかった。これは、研究代表者が、平成29年3月末に下関市立大学経済学部を退職、同年4月より甲南大学経済学部に着任し、新規の授業の準備に時間を取られたこと、および、同年2月に第2子が誕生したことで、公私ともに多忙となり、本研究に十分に時間を割くことが出来なかったためである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

平成26年度は、先行研究の文献調査と整理、学会等での研究動向の調査を行った。また、複数の経済主体が自発的に防災活動を行うモデルを構築した。
平成27年度は、人口密集地で大都市直下型地震が発生するケースを想定した経済理論モデルを構築し分析した。
平成28年度は、主として、(1)公共財の自発的供給モデルを用いた大都市直下型地震への防災に関する研究、(2)防災問題のように複数の公共財が家計により自発的に供給される状況での市場の失敗に関する理論研究、および、(3)政府による防災公共財の供給に関する研究に取り組んだ。
平成29年度は、上述のように、研究代表者の異動と第2子誕生のため公私ともに多忙となり、本研究に十分に時間を割くことが出来なかった。そのため当初の予定と比べて研究の進捗は遅れてしまった。平成29年度に進捗した成果としては、経済主体が協力して、災害のような不測の事態に備えるケースで、各経済主体が不測の事態における損失の規模を、利益団体の影響などにより誤認する場合の影響を理論的に分析したことが上げられる。この研究成果は、上記の通り7月にパリで開かれた学会で発表した。また、平成29年度の終盤に、次の3つの研究に取り組んだ。第1に、経済主体が共通のリスクを集団的に管理する場合の経済主体間での負担の分担がどのようになるかを理論的に研究した。第2に、複数の経済主体が同時に複数の公共財を自発的に供給する条件についての研究を深度化させた。第3に、政府の防災活動と家計の防災活動の関係についての理論分析を深度化させた。また、平成30年度までの補助事業期間の延長を申請し、承認された。

今後の研究の推進方策

平成30年度は、災害などのリスクを削減する公共財の供給に関する研究成果を学会等で報告していくとともに、これまでの研究成果を総括し、論文等の形で発表していく。このうち、経済主体が共通のリスクを集団的に管理する場合の経済主体間での負担の分担がどのようになるかについての研究成果と、複数の経済主体が同時に複数の公共財を自発的に供給する条件についての研究成果については国際学会での発表を予定している。最終的には、学会発表等でのコメントも踏まえつつ、本研究のこれまでの分析を総合して、災害の態様や社会の状況に応じた最適な防災政策のあり方を明らかにすることを目指していく。

次年度使用額が生じた理由

上述のように、平成29年度は研究代表者の異動と第2子誕生のため、本研究に十分に時間を割くことが出来なかった。そのため、研究が当初計画通りに進捗せず、次年度に予算を残すこととなった。この次年度使用額については、平成30年度に、研究成果を学会等で報告するための旅費や英文校正費などに使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Impacts of Misperceptions about Disastrous Events on International Security2017

    • 著者名/発表者名
      Shintaro Nakagawa
    • 学会等名
      the 18th Annual Meeting of the Association for Public Economic Theory
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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