研究課題
本年度は、我々の最終目標である「DSGEモデルを用いた租税帰着の分析」のため、まず、理論モデルを導出し、これを対数線形近似した。このモデルの特徴は、ハイスキル労働者(熟練労働者)とロースキル労働者(非熟練労働者)が明示的に取り込まれていること、および、それによって、租税帰着の問題を、要素所得の分配率の視点からだけで無く、「格差」の観点からも分析できるようにしたことにある。その上で、このモデルをベイズ推定し、消費税率に関する様々なシミュレーションを行うことによって、租税帰着の短・中期的な分析を行った。その中心的な結論は、以下のようになった。すなわち、①消費増税によって、物価の上昇、消費の減少、産出量の減少がもたらされた。②その一方で、賃金率は上昇し、実質利子率は低下した。③所得格差に目を転じると、短期では、ロースキル労働者とハイスキル労働者の賃金格差は縮小するが、④中期的には賃金格差は拡大した。⑤資本・労働の分配率についてみると、短・中期的には、労働分配率は上昇し、資本分配率は低下することが明らかになった。上記の研究に加えて、DSGEモデルを作るにあたってどのような点に注意しなければならないかを把握すること、また、長期的な視点に基づいた経済分析を目的とした研究も同時に行った。具体的には、貨幣供給量の変化が長期的にはどのように、経済成長に影響を与えるのかを分析した。貨幣のモデル経済にどのような影響を与えるのかを考慮するのはDSGEモデルにおいては重要であり、この分析により、貨幣のモデルにおける役割を明確に把握でき、さらに長期的な影響についても考察できた。また、社会保障の財源のための世代間の負担格差が租税の帰着としてマクロ経済にどのような影響を与えるか、さらに世代間の公平性のあり方についても考察した。これは現代の経済政策のあり方にとっても参考になるものと言えよう。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
経済学論究
巻: 70(4) ページ: 63-81
The University of Kitakyushu, Working Paper Series
巻: 6 ページ: 1-24
巻: 8 ページ: 1-19
MPRA Paper, University Library of Munich, Germany
巻: 75578 ページ: 1-19
巻: 75704 ページ: 1-20