研究課題/領域番号 |
26380368
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
牧 厚志 東京国際大学, 経済学部, 教授 (20051906)
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研究分担者 |
西川 理恵子 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (00180597)
六車 明 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (60317287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 職務発明 / 特許法35条 / 相当の対価 / 個別ライセンス契約 / 包括クロスライセンス契約 / ストックオプション |
研究実績の概要 |
職務発明によって会社に大きな利益が出た場合、どのようにその貢献を評価し、発明者である従業員へ分配するかが職務発明裁判の争点となる。発明者は従業員として会社に「雇用」され、仕事に従事する。仕事の内容は、通常、会社が指示する。そこで従業員はプロジェクトを組み、予算案をたて、当該研究に必要な人材を確保し、会社の予算から設備、原材料を調達する。研究の結果、新しい知見・工夫が具体化されると、それを特許という形で公示する。職務発明では、発明者は従業者であるが、特許権は従業者から使用者(会社)に承継される(法35条3項)。そして従業者は使用者から「相当の対価」として報償金を得る(同条同項)というのが、法35条の趣旨でもある。 研究では、職務発明に関する「相当の対価」について判例に基づいて評価を与えた。判例による職務発明の対価について、もっとも単純な個別ライセンス契約の基本的な「相当の対価」の算式は、相当の対価=ライセンス契約額×寄与率(当該特許にかかわる会社の受け取る利益)×(1-会社の貢献度)×(1-共同研究者の貢献度)。 またもっとも複雑な包括クロスライセンス契約における基本的な「相当の対価」に関する算式は、相当の対価=当該特許にかかわる売上高×当該特許に関する製品寄与率×実施料率(業界の例に準じる)×(1-企業の貢献度)×(1-共同研究者の貢献度)。 職務発明裁判では相当の対価の算定が問題であったが、使用者が従業者に相当の対価をどのような形で支払うかという問題が残されている。本研究では、ストックオプションを利用することを第一に提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析の一次資料は、基本的に、最高裁判所判例集を使った。最高裁判所判例集には、トラブルの原因と請求する事項、当事者同士の言い分、裁判所の判断理由等が、第1審、第2審の判決も含めて集録されている。26年度は、職務発明の判例を検討した。 判例を選択し、法学者のアドバイスの下、素案の形で経済学者が判例の検討・評価をした。その上で、法学者と経済学者が当該判例の本質を、共同で、検討・評価した。徹底的な検討がこの共同研究の成果であり、経済学者が最高裁判所判例の趣旨を正確に理解していなかったり、あるいは法学者が専門化の観点から及びもつかない盲点を経済学者から指摘されることもあった。このようにして検討された原稿を完成させ、ワーキング・ペーパーを完成し、専門的なジャーナルに公刊した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降についても、平成26年に引き続き、最高裁判所判例の検討を加える。経済取引は、原則的に、民事の問題であるが、刑法に抵触する場合には、民事裁判ばかりでなく、刑事裁判になることもありうる。例えば、自由競争市場のあり方を害するような経済取引である談合・不正入札と関連する独占禁止法違反に対する刑事的な法律違反行為に対する判例等を取り上げる予定である。 このようにして、平成27年度以降には、民事ばかりでなく、刑事の分野にも判例を増やし、広義の経済取引に関する刑事判例の検討を行う。そのスタンスは、判例解説だけにとどまらず、経済理論と法律解釈相互の見方で結論を出すことを目的としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年に刊行予定の書籍について、購入する予定であったが年度内に刊行がなされなかったため、残額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
発行された際に、購入資金に当てる。
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