昨年度に引き続き、日本の大手情報通信技術関連企業(東証1部上場企業)の子会社である法人顧客の問題解決センターで所在県の異なる2事業所で、そこで働く従業員にウェアラブルセンサを一定期間装着してもらい、従業員間のコミュニケーション量の計測を実施した。あわせて、両事業所のマネージャークラスの正社員に業務と成果に関する詳細な聞き取り調査を実施した。これに、事業所内で問題解決ができたか、一定時間内に顧客からの問い合わせ内容に回答できたか、さらには無作為抽出によって選ばれた顧客による品質に関するアンケート調査の結果等、計測期間中の成果指標を入手し、コミュニケーションパターンやコミュニケーションネットワークと生産性の関係を明らかにすることを試みた。 そして、コミュニケーション時間やネットワーク分析で用いられる各種中心性の指標などを説明変数に、成果指標を被説明変数にして回帰分析等を行った結果、次のような結果が得られた。第1に、単純にface-to-faceのコミュニケーション量を増やすことは、いかなる業務成果に対しても有意な正の効果を与えない。第2に、従業員の業務をサポートするキーパーソンとのコミュニケーション時間も業務の成果に対して有意な正の効果は与えない。第3に、各種中心性指標のうち、媒介中心性がその個人が主導するインシデントの事業所内自己解決率に対し有意な正の効果を持つことが明らかになった。これを、事業所別にも分析を試みたが、いずれの事業所においても同様の正の効果が見られ、扱う製品やチーム編成が異なっていても、コミュニケーションネットワークの結節点に位置することが自己解決率というチームの成果に影響することが明らかとなった。 研究成果を論文として執筆して投稿し、採択され、2018年1月に国内査読付き学術雑誌に掲載される予定である。
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