研究課題
本研究は、予算額決定と予算の各施策への配分に関する決定が、政府内の複数の主体間で分担して行われることで、政策の経費がどのような影響を受けるのかを、ゲーム理論に基づいて分析することを目的としている。予算の総額を決定する主体が、各施策への予算配分を、選好の異なる主体に委任するとき、前者が望む配分が実現されないというプリンシパル・エージェント問題が発生する。本研究では、プリンシパルあるいはエージェントの選好について、双方の間に情報の非対称性が存在するとき、予算配分がどのような影響を受けるのかについて考察した。平成26年度は基本となる理論モデルを構築した。完全情報を仮定し、予算過程の分割、複数のエージェントへの委任の効果を明らかにした。平成27年度は基本モデルに情報の非対称性を導入した。プリンシパルがエージェントの選好を知らないとき、選好についての情報を引き出すためには、来期に多くの予算を得ることを諦めさせるために、今期に多くの予算を配分する必要があることを示した。このことによってプリンシパルがエージェントの選好を知ったとしても、自分の選好に近いエージェントに配分できる予算は多く残されていない。政府内、あるいは分権的財政制度下の上位政府と下位政府の間で情報の非対称性が存在することが、非効率な予算配分につながることが明らかになった。平成28年度は2つの方向への拡張を行った。まず、平成27年度までは対称均衡を仮定していたが、非対称均衡の存在を示した。事前には同一のエージェントに対して予算編成上異なる扱いをすることによって、プリンシパルの効用が高くなる可能性が示された。次に、エージェント間の競争の促進がもたらす効果について考察した。競争の促進、2期の予算額へのシーリングの設定の影響は、本課題を進めるなかで生まれてきた新しい研究課題であり、今後も引き続き分析していく予定である。
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International Tax and Public finance
巻: vol. 24 ページ: 96-111
DOI 10.1007/s10797-016-9411-6
Discussion Papers in Economics and Business, Graduate School of Economics and Osaka School of International Public Policy, Osaka University
巻: No 16-27 ページ: 1-22