研究課題/領域番号 |
26380373
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
高安 雄一 大東文化大学, 経済学部, 教授 (20463820)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / 韓国 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、韓国で2007年7月に施行された非正規保護法における雇用期間制限が、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換することを促したか、「経済活動人口調査雇用形態別付加調査」(2004年から2013年の各8月調査)(以下、「付加調査」とする)のマイクロデータを使用して分析した。 雇用期間制限により、2009年7月以降、2年を超えて雇用された有期雇用労働者は無期雇用労働者と見なされることとなった。しかし「付加調査」が採用している定義によれば、有期雇用契約を結んでいる者は、雇用期間にかかわらず全てが有期雇用労働者に分類される。よって従来の定義によるならば、雇用期間制限の転換効果が正確に把握できない。 そこで、雇用期間が2年を超えた有期雇用労働者(非正規職保護法で定められた雇用期間制限の適用例外者を除く)を無期雇用労働者に分類するなど、「付加調査」の定義を変更したうえで、非正規職保護法の転換効果を検討した。なお定義変更に際しては、正確なデータを得るため、「付加調査」の調査票の精査を行った。 その結果、第一に、非正規職保護法の法的拘束力により、雇用期間が2年を超えた有期雇用労働者が無期雇用労働者に転換されたことで、有期雇用比率が3%程度低下したことが明らかになった。第二に、非正規職保護法の雇用期間制限が実際に効力を持つ2009年7月以前に、企業が自主的に、雇用期間が2年超の有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換したことにより、有期雇用比率が1.5%程度低下したことがわかった。 先行研究では、非正規職保護法の転換効果を明確に確認することができなかった。平成26年度の研究は、「付加調査」が有する問題点を改善し、雇用期間制限の転換効果を明らかにした点で学術的に意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度には、非正規職保護法における雇用期間制限が、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換を促した点を、「付加調査」のマイクロデータにより明らかにした。韓国で蓄積されてきた先行研究においては、非正規職保護法における雇用期間制限の転換効果に否定的な結果が示されることが多かったが、「付加調査」が有する問題点を改善したことで、雇用期間制限の転換効果を確認することができた。 さらに、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換は、2年間を超えて雇用したことにより無期雇用契約が結ばれたとみなされる形、企業が改めて無期雇用契約を結ぶ形でなされたことも明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、有期雇用労働者の無期雇用労働者への転換を行った企業が、コスト上昇に対応するため、雇用削減、労働条件の引き下げ、間接雇用者の比率の引き上げを行ったか否かなどについて検証する。検証は大きく、①マイクロデータを利用した定量的分析、②業界団体等に対するヒアリング調査を通じて行う。 マイクロデータを利用した定量的分析については、「事業所パネル調査」のマイクロデータを入手したうえで、事業所データをパネル化する。そして、有期雇用労働者の無期雇用労働者への転換を行った事業所が、行わなかった事業所と比較して、雇用の削減、労働条件の変更、間接雇用比率の引き上げを行う確率が高かったか否かにつき定量的に分析する。また「雇用形態別勤労実態調査」のマイクロデータを入手したうえで、非正規職保護法の導入以降、無期雇用労働者の賃金等労働条件がどのように変化したかにつき、産業別に把握する。 業界団体等に対するヒアリング調査では、マイクロデータを利用した定量的分析からは明らかにできない点を把握する。具体的には、非正規保護法の施行以降、有期雇用労働者を無期雇用労働者に転換した企業が多く、かつ雇用者数や雇用条件に変化があった産業を選定し、その業界団体等に聞き取り調査を行うことで、その変更が無期雇用者への転換に起因するものかなど、詳細な情報を把握する。 そして最終的に、①有期雇用労働者の無期雇用労働者への転換が、企業の雇用削減、無期雇用者の労働条件の悪化、間接雇用比率の引き上げなど、企業行動の変化をもたらしたのか、②もたらしたとすれば、無期雇用者への転換が企業行動を変化させたメカニズムについて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に行う予定であった資料郵送が平成27年度に伸びたため、そのために必要とされた郵送料が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に資料発送のための郵送費として使用する予定である。
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