研究課題/領域番号 |
26380374
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
阿部 正浩 中央大学, 経済学部, 教授 (70303047)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 失職問題 / 職探し期間 / アウトプレースメント |
研究実績の概要 |
27年度は二つの研究を行った。 第一に、26年度に整理したアウトプレースメント業務データを利用して、論文「一事例から見た再就職支援と労働移動助成金の課題」を著した。この論文では、2013年に拡充された労働移動支援政策が、離職を余儀なくされた労働者の再就職にどのような影響を与えているかをアウトプレースメント業務データの分析結果を踏まえながら検討した。その結果、雇用調整を行う企業には再就職支援を行うインセンティブが弱く、一部の企業しか助成金を利用しておらず、再就職支援を受けられる労働者は一部しかいない。また、再就職支援を受けられる労働者の中には、支援サービスを受けない人もおり、結果として良好な再就職先を探すことが出来ないケースもある。こうした課題を解決するには、送り出し企業に対する助成ではなく、離職を余儀なくされた労働者に直接支援を行う制度の設計が必要であると考えた。この論文は、『日本労働研究雑誌』(2016年6月刊行予定)に掲載される予定である。 第二に、リクルート・ワークス研究所『ワーキング・パーソン調査2015』を利用して、論文『転職者の希望年収はどう決まるか』を著した。この論文では、転職する際に人々がどの程度の年収を希望するのか、そしてその希望賃金の大小にどのような要因が影響しているか、について分析した。分析の結果、希望年収には前職の年収が強く影響していること、職探しの方法や退職理由、そして入職経路の違いも影響していること、などが観察された。また、失業期間や転職1年目の年収に対する希望年収の効果について分析すると、希望年収の高い者の失業期間は短い傾向にあること、希望年収と転職後1年目の年収は正の相関関係にはあるが、平均して希望年収より1割程度低い水準になっていること、などが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遅滞していたアウトプレースメント業務データの整備が完了し、一定の分析が出来た。特にアウトプレースメント業務データの分析においては、労働移動助成金の政策評価も絡めて、日本労働研究雑誌に掲載される論文にまとめており、当初の研究計画よりも早く進捗したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
26年度と27年度の研究では、離職を余儀なくされた労働者の量的把握とそうした労働者の転職行動について焦点を当てて、分析を行い、当初の想定以上に研究は進捗していると考えられる。次年度は、「失業なき労働移動」の実現に向けた政策の在り方について検討するため、これまでの分析結果を再検討するとともに、国内で発生したリストラ事案についてハローワークや民間職業紹介機関へのヒアリングを行い、離職を余儀なくされた労働者の再就職支援問題を掘り下げて分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内出張が先方の都合と桐朋の予定が合わず、実施することが難しくなったために剰余が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで実施できなかったヒアリングを行う予定である。
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