研究課題/領域番号 |
26380375
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
御船 洋 中央大学, 商学部, 教授 (80129965)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会保障協定 / 海外進出企業 / 社会保険料の二重負担 / 年金制度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①日本の海外進出企業の進出先国における社会保険料負担(特に年金保険料負担)の実態を調査すること、②社会保障協定締結国に進出している日本企業の社会保険料の負担軽減額を推計すること、③その一方で、社会保障協定非締結国に進出している日本企業が支払っている社会保険料の二重負担額を推計すること、そして④同様に日本に進出している外国企業が得ている利益や被っている不利益の大きさを推計することである。 社会保障協定がもたらす利益、あるいは社会保障協定を結んでいないことによる不利益の具体的金額を推計することによって、社会保障協定の意義や役割を明確化し、社会保障協定締結の積極的推進をサポートすることが本研究の意義だといえる。また、こうした推計作業は、今後、諸外国と社会保障協定締結を進めていくにあたり、どの国から優先的に協定締結を進めるべきか、そのための指針を提供することにもなる。 平成28年度には、前年度に引き続き、日本の社会保障協定締結国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等発効済国16か国、イタリア、ルクセンブルグ等署名済ながら未発効国4か国)の協定の内容の精査、および各国の社会保障制度(特に年金制度)の調査を行った。 一方、日本の海外進出企業の実態については『海外進出企業総覧』(東洋経済新報社)や『中国進出企業一覧』(蒼蒼社)等のデータベースを利用して、日本の海外進出企業の実態(企業数、日本からの派遣従業員数等の国別、産業別データの集計等)の把握を行った。 しかし、各国の年金制度の詳しいデータは意外に入手しづらく、また、海外進出企業のデータが膨大であるうえに、データに不明や欠損の部分があったり、知りたいデータが載っていない、といった問題が現れて、研究の円滑な進捗が阻まれた。かくして、平成28年度内に研究を終了させることができず、1年間の研究延長を願い出ることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
第一に、日本が社会保障協定を締結している国は現在16か国であるが、各国の年金制度の仕組みやデータを調査するのに、非常に時間がかかる。また、中国のように社会保障協定を締結していないが(政府間交渉中)、非常に多くの日本企業が進出している国の年金制度についても調査する必要があり、本研究の目的や趣旨からして、調査対象となる国の数は社会保障締結国に限定されるわけではなく、調査対象国のリストはもっと増える可能性がある。 第二に、日本の海外進出企業の進出国における社会保険料の支払いの実態については、有価証券報告書等を見てもわからない。進出企業にデータを提供してもらうのが最も確実な方法であるが、企業はそうした情報は公開したがらない。また、社会保障協定の所管官庁である厚生労働省の担当部署もこうした情報の公開には消極的である。加えて、社会保険料の二重負担の金額についての調査は、日本経団連等の団体によって不定期に行われる程度であって、継続的に実施されているわけではない。 以上のような理由によって、研究が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
作業の遅れを取り戻すために鋭意努力する。各国の年金制度の調査については、全般的な調査をするのではなく、海外進出企業の年金保険料の支払いに関連する項目や内容にしぼって重点的な調査を行いたい。 また、海外進出企業の年金保険料の二重負担に関しては、引き続き企業にアプローチし、個別データを集めるべく努めるが、データの提供を拒否されるケースが多くなることが予想されるので、その場合には、集まったデータはあくまで参考資料的位置づけとして、『海外進出企業総覧』等のデータベースを用いて、いくつかの仮定を置いたうえでの推計作業に注力したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度には、海外実態調査を行う予定にしていたが、社会保障協定や各国の年金制度の調査、日本の海外進出企業の実態把握に関する作業に大幅な遅れが生じたために、海外でのヒアリングや調査ができなかった。そのため、旅費、人件費、謝金等の経費が未使用のままとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、社会保障協定や各国の社会保険制度(特に年金制度)の調査研究の進捗を図るために、調査の対象やポイントをしぼって、関連資料や文献の収集と分析を積極的に行う。年金保険料の二重負担に関して、個別企業や業界団体、関係省庁等からヒアリングを行うとともに、これまでできなかった海外実態調査を行いたい。そのため、旅費、人件費、物件費、謝金等を支出することとなる。
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