研究課題/領域番号 |
26380377
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
菅原 琢磨 法政大学, 経済学部, 教授 (50364659)
|
研究分担者 |
南部 鶴彦 学習院大学, 経済学部, 名誉教授 (00061416)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 後発医薬品 / ジェネリック / スタチン / 市場シェア / 後発医薬品利用促進 / 広告宣伝 / 薬価 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
初年度となる本年度は計画通り、後発品の参入が多数である「スタチン剤(コレステロール低下剤)」を中心に分析をおこなった。取得データの検分、コード確認をおこない、データの瑕疵、不明、問題点の確認をしたうえでデータセット作成に注力した。具体的検証に入る前段として全体傾向を概観するため(1)製品別に時系列的な売上・数量シェア推移の把握、(2)製品別宣伝シェア推移の把握、(3)先発品(長期収載品)と後発品とのシェアの推移(相関)の検討、(4)売上ならびに数量シェアと宣伝活動の関係性把握のための相関分析等を順次実施した。 続いて検証仮説の柱となる理論モデルを検討した。当初の理論モデルは、圧倒的なシェアを有する先発品(長期収載品)と多数の後発品というライバル間の市場競争を想定し製品価格や販売促進活動の差がもたらすブランド力の差といった要因を考慮し、利潤最大化を前提に相互の最適反応関数を導くことから始め、医薬品の市場シェア決定モデルを誘導型として導いた。推定モデルの特定化については、医薬品シェアの決定要因として先発・後発品の区分をベースに、薬剤価格(薬価基準額)、薬剤に対する信頼性(発売後の経過年数等)、医薬品にかかる情報量(MR 等の広告宣伝活動量)、政府による後発医薬品の促進政策の導入といった諸因を説明変数として採用した。 スタチン剤市場における後発品の数量シェアを被説明変数とし、最初に時系列分析を、その後、パネルデータを構築して分析をおこなった。時系列分析による暫定的な結果では、先発品と後発品の価格差(相対価格比)は有意な影響要因となったが、後発品の宣伝努力は必ずしもシェア拡大要因とは認められなかった。また政府が後発品利用拡大のために2008年以降に導入した後発品普及策の効果は大きく、それら一連のシェアへの影響は後発品価格を先発品の半値とした場合と同程度である可能性が推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り作業を実施することが出来た。全体事業期間において、3薬効分野の分析をおこなう予定であるが、初年度はコレステロール低下剤の代表とも言えるスタチン剤について分析を実施した。データの概観の後、時系列分析、パネル分析をおこない、各々新たな知見を含む興味深い結果が得られたと考える。 また予定以上に作業が進捗したため、次年度以降で予定していた「消化性潰瘍治療薬」、「抗うつ薬」についても一部分析データセットの作成とデータの概観作業をおこなうことができた。 以上の状況より、当初の計画以上に順調に進捗しているものと自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえ「消化性潰瘍治療薬」、「抗うつ剤」の2 薬効を中心に順次分析をおこなう。また「スタチン剤」に関する分析も、引き続き変数や分析方法の洗練を行うなど継続する。最終年度である平成28 年度には、薬効を跨いだ全体の分析も実施する予定である。具体的な検証作業フローは本年度の「スタチン剤」のケースとほぼ同様となるが、個々の薬効特有の要因、個別の薬剤の特徴を丁寧に考慮しつつ分析をおこなう。また「降圧剤」など、今後の高齢化の進展や社会状況の変化において、より重要性を増すと考えられるこれ以外の薬効についても新たなデータの追加入手を検討する。 得られた研究成果については、随時、研究会や学会での報告をおこない、論文として公表する。初年度の一部成果については、早速、論文化を進めており、次年度には国際医療経済学会(iHEA)での報告採択が決定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データセットの作成、加工の為、作業補助員の確保を予定していたが、予定の人数、時間確保が出来なかったことが、人件費、謝金の使用額に予定額との差が生じた大きな理由である。 また今年度については、このような状況を鑑み、特段の配慮により一定のデータセット加工を予め業者がおこない納品して頂けた都合で人件費・謝金の軽減が図られたこともある。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度については作業補助者確保の見通しがついており、予定した人件費、謝金の発生が見込まれる。また当初は事業期間全体で3薬効分野の分析を予定していたが、本年度予想以上に作業が進捗したことで、新たな薬効分野の追加も検討している。この部分についてはデータ取得に追加的な支出が見込まれる為、全体の所要額を調整のうえ、本年度繰越額の活用を考える。 次年度には予定した国際学会での報告が採択されるなど、計画通りの旅費の発生が見込まれるほか、学会報告や英文誌投稿を目指した校正・翻訳料の発生も見込まれる。
|