本研究ではわが国の医薬品市場売り上げのほぼ全てをカバーする大規模データベースを利用し、市場規模が大きく今後の高齢化とともにさらなる拡大が予想される幾つかの薬効分野を分析対象として、個々の製品市場シェアの決定要因を分析することで、医薬品市場の構造を解明することを主たる目的とした。 一年目、二年目の研究では、製品市場の医薬品シェア競争を「先発品対後発品」の枠組みで検討したが、「先発品-後発品の相対価格」、「市場成長率」、「後発品普及政策(処方箋様式変更、後発品使用体制加算)」は各々の先験的符号条件を満たしたうえで後発品市場シェアへの要因として有意に推定された。 三年目ならびに本年度はパネルデータと時系列から平均変化率を算出したクロスセクションデータを作成した。これらを活用し、「スタチン剤(コレステロール低下剤)」を主たる対象として、企業のおこなう広告宣伝活動、実勢価格、後発医薬品促進のための政策変更が後発医薬品の市場シェア(錠数シェア)にいかなる影響を及ぼすか検証した。パネルデータによる固定効果分析では、実勢価格、広告宣伝活動(MR訪問回数とE宣伝回数の蓄積)、後発品促進政策(処方箋様式の変更と後発医薬品使用体制加算)が各々先験的に予想された方向でシェアに有意な影響を及ぼすこと等が示唆された。 これらの複数のモデル推計の結果から、後発医薬品の市場シェアへの影響要因としては、「価格(先発品との相対価格、実勢価格)」、「宣伝・広告の蓄積」、並びに「政府が実施してきた後発医薬品の普及促進策」が抽出された。
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