研究課題/領域番号 |
26380378
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
岸 智子 南山大学, 経済学部, 教授 (30234206)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パネルデータ / 就業形態 / 正規労働者 / 非正規労働者 / 進学率 / 景気 |
研究実績の概要 |
平成27年度は家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」とオーストラリア・メルボルン大学のThe Household Income and Labour Dynamics in Australia (HILDA) Survey, そして慶應義塾大学の「慶應義塾パネル調査」を用いて分析を行なった。その結果、明らかになったことは以下のようである。 1)「消費生活に関するパネル調査」によると、若い世代ほど(つまり、生まれた年が遅いほど)出産後退職したり、非正規労働者になったりする人の割合が低くなっている。育児休業制度の効果が表れている可能性がある。他方、結婚や出産の前から非正規労働者であったり、出産の前に正規労働者から無業者または非正規労働者に転換したりする人の割合は古い世代より高くなっている。 2)HILDAの分析結果によると、いったん就職した人が大学院などに戻る割合が、特に女性で高くなっている。結婚・出産後の女性に関しても進学率が高い。ただし、進学者の再就職はその地域の景気や失業率に強く左右されている。大学および大学院が失業の軽減や就業形態の転換に寄与しているといえる。 3)「消費生活に関するパネル調査」および「慶應義塾パネル調査」の回答者には、一度就職してから、大学院で学んでいる人は、まだ少数派であることがわかった。 2)および3)については、2016年1月にシンガポールで開催されたWestern Economic International Association 12th International Conference で発表した。また、2016年1月には大阪で開催された関西労働研究会でも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)研究成果をいくつかの学会で報告し、その後論文にまとめる予定であったが、その論文はまだ投稿できていない。メルボルン大学で2015年に開催されることになっていた学会は主催者側の理由で中止になり、またEconometric Societyでは報告希望者が多く、報告を認められなかった。2016年Western Economic Association Internationalで報告を行うことができ、コメントを基に論文を手直ししている。 2)日本とオーストラリアとでは大学や大学院の位置づけが異なるため、同じ分析枠組みで分析することは不可能であり、手法を変えなければならないことがわかった。平成27年度に予定していた分析を本年も継続して行う予定である。 3)本研究を始める前に気づかなかった、パネルデータの特徴や問題点が明らかになってきた。そして、パネルデータの欠損値(つまり、ある年度から答えなくなってしまう人の空白欄)をどう扱うか、回答の誤りと思われるケースをどう扱うか、またオーストラリアと日本のように、学歴分布が大きく異なる場合の比較をどのように行うか、変数の値が急速に変化していくときの分析をどのように行うか、などの知識を得た。しかし、平成27年度の分析にそれらを反映させることができなかった。 4)Web調査については、調査項目の選定はできているが、実行に移せていない。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で記述したように、平成27年度の研究では、顕著な成果をあげることがで以上のような方策により、研究成果を本年度中にまとめることができるよう、尽力したい。本年度は研究の遅れを挽回するために、以下のようなことを計画している。 1)2つの国際学会、1つの国内学会での報告(すでに報告を申し込んでいる)。パネルデータに関する研究会や講習会への参加(研究会での報告はすでに申し込んでいる) 2)週間行動計画を見直し、授業日と研究日とを明確に分離し、また研究日の一日の行動計画や目標を決め、研究日に効率的に研究に集中できるような環境を作る。研究の進捗状況を日誌に残す。 3)前年度、報告を認められなかった論文を手直しし、報告または投稿ができるような内容へと改訂を重ねていく。研究で利用しているデータの再点検・整理を行う。
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