研究課題/領域番号 |
26380379
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
赤木 博文 名城大学, 都市情報学部, 教授 (30254270)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会資本 / 人口移動 / クラウディングアウト |
研究実績の概要 |
本研究の研究目的は、社会的インフラ整備が経済成長に貢献してきたか、それとも生産要素市場におけるクラウディングアウトを通して経済成長を阻害する方向に作用してきたか否かを、理論的にかつ実証的に検証することである。社会的インフラ整備の生産力効果と需要創出効果を統合して分析するべきだと考えられる。 このテーマについて、以下のような流れで、分析する方向である。[1]人口移動、社会的インフラ整備や経済成長についてデータから、その大まかな関連性をつかむ。[2]実証分析の元となる基礎的な理論モデルを構築する。[3]実証分析で検証可能にするため実証モデルを構築する。[4]社会的インフラ整備が民間部門を活性化したのか、社会的インフラ整備が民間部門の成長を阻害したのかを、実証モデルをもとに検証を行う。 初年度の平成26年度では、[1]の人口移動、社会的インフラ整備や経済成長との関係を基礎的データによって大まかにつかむことを中心に分析を行ってきた。社会的インフラについてはこれまでの研究で大まかな傾向はわかっている。しかし、人口移動については、様々な経済的・社会的要因が絡んでくると思われたので、まず、全体的な人口移動の傾向をつかむことにした。その分析で、とくに日本の経済発展との関わりで、いわゆる高度成長期の昭和36年から昭和47年にかけて、都道府県間の人口移動が急激に増加したことがわかる。とくに東京圏、名古屋圏、大阪圏への人口移動が大きい。これは、都市部と地方部の経済的な格差が相対的に開いてしまったことが関係しているかもしれない。また、昭和62年前後に人口移動が活発になる時期があるが、このときはおもに東京圏への移動がメインで、名古屋大阪圏への移動は小さなものとなっていることがわかる。これは、経済的な格差とは異なる要因が作用していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には、人口移動、社会的インフラ整備や経済成長との関係を基礎的データによって大まかにつかむことを中心に分析を行ってきた。社会的インフラについてはこれまでの研究で大まかな傾向はわかっているが、人口移動については、様々な要因が絡んでいると考えられるため、人口移動に影響を及ぼした経済変数をまず洗い出すことが大切であると考えられたからである。初年度は、モデル分析や実証分析を展開しているわけではなく、基礎的データの大まかな傾向をつかむことが主眼であり、分析それ自体はそれほど困難ではなかった。 ただ、次年度以降のモデル分析の場合、精緻な分析となるので、経済変数間の関わりを理論モデルに反映させることが、必ずしも容易でないことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究期間では、[1]で得られた経済変数間の関連を考慮に入れて、研究計画・方法で述べたように[2]から[4]の基礎的モデルの構築と実証モデルの構築、それに基づく実証分析を計画している。とくに生産力効果と需要創出効果を統合して、民間部門と公共事業部門(建設業)との間での労働者のクラウディングアウトの可能性を考慮した基礎的な経済モデルの構築を行う。 社会的インフラ整備のための公共事業は社会資本として民間の生産性を高めるが、その一方で公共事業に要する生産要素に関して、資本市場での資金をクラウドアウトし、または労働市場での労働をクラウドアウトし、その結果として民間の生産性を阻害してきた可能性がある。したがって、通常の生産性効果の分析でクラウディングアウトの影響を考慮しないと、社会的インフラの貢献が過大もしくは過小に評価されてしまうことになる。 この点については、国際経済学や都市経済学の研究成果を参考に、2部門もしくは2地域モデルとして理論モデルを構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に購入予定であった一部の書籍の在庫が切れており、購入できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、在庫が確認できれば、当初予定した書籍を購入する予定である。在庫切れが解消されない場合には、別の関連書籍を購入する予定である。
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