研究代表者である小川は、開放経済における最適物品税の分析をおこなった。WTO-GATT体制、あるいは世界銀行の圧力の下、自国が自由に関税率を調整できない場合を想定し、与えられた関税率の下での最適物品税を分析した。特殊ケースとして関税率がゼロのケースでの最適物品税構造も明らかにした。本研究では、これらの分析を、国際価格を所与として受け入れる小国と交易条件を改善できる大国のそれぞれでおこなった。小国においては、閉鎖経済での最適物品税ルールとして知られるラムゼイルールに加え、所与の関税率を考慮するように最適物品税が設定される。関税率がゼロならば、開放経済の最適物品税はラムゼイ公式に従う。大国の場合は、所与の関税率、ラムゼイルールと交易条件効果を考慮するように最適物品税が設定される。以上の分析をまとめた論文に加え、越境汚染が存在する場合の国際課税問題を分析した論文、外部性が生産性に影響を与える場合の租税政策の効果を明らかにした論文、法人税の企業移転と雇用に与える効果を分析した論文を作成した。いずれの論文も投稿中、あるいは投稿準備中である。 研究分担者の堀井は、前年度に引き続き2国国際マクロモデルの数値解析を行い、特に現実データとシミュレーションを比較対照するカリブレーションを行う際になる問題点について、検討を行った。また、理論上では国際間貸借の利子率(世界利子率)は一定と想定するが、アメリカについては対外債権の利子率が対外債務の利子率を上回る状況が見受けられ、現実の対外債務は理論から導かれる対外債務の増大よりもかなり小さいことが分かった。一方、日本においてはこのような利子率の乖離は小さいため、比較的理論との整合が良い。また、これらをまとめ、論文を現在執筆中である。
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