研究課題「コーポレート・ガバナンスの変貌と企業行動」の最終年度である平成28年度においては、成果の取りまとめとその出版に重点を置いた活動を実施した。 具体的には、アカデミックな専門書籍出版で名高いSpringer 社から、Springer Briefs in Economics での出版の機会を得て、Corporate Governence and Corporate Behavior in Japan The Consequences of Stock Options and Corporate Diversification というタイトルの単著を出版した。 同書においては、企業法制を巡る制度変革を追い風にして、近年進みつつあるストック・オプション制度の導入および多角化や分社化の進展といったいわば日本の企業経営の新しい潮流に焦点を当て、そのような要素が果たしてどのような企業行動やパフォーマンスを生み出すのかを考察した。 このうち、ストック・オプションの導入の効果に関する実証分析によれば、収益性を向上させるというプラスの効果が発揮されていない一方で、リスク・テイキング行動を助長させるというネガティブな副作用を及ぼしているわけでもないという結果が得られた。また、多角化および分社化の分析によると、多角化は収益性に対してマイナスの効果を及ぼしているばかりではなく、所有構造に関する変数のガバナンス効果を大きく減衰させているというネガティブな効果を惹起しているという分析結果が得られた。 本研究課題の成果物である本書では、日本のコーポレート・ガバナンスに関連した企業制度の変貌が、どのような企業行動を導き、その結果のパフォーマンスにどのような効果を及ぼしたのかを明らかにした。
|