想定確率過程を特定出来ない「ナイトの不確実性」下での金融機関の頑健運用モデルの構築を企図し、その基本モデルとして、相対的危険回避度一定効用をナイトの不確実性下に拡張した「相似拡大的頑健効用」を持つ投資家がアフィン・2ファクター証券市場モデルの下で消費と長期証券投資(投資対象は株式指数と全満期の国債)を頑健最適化する問題に対し、Campbell and Viceira(2002)の対数線形近似法を適用して最適運用の近似解析解を導いた。そして、生命保険会社の生命保険販売を特殊な証券の空売り投資と見做し、生保債務をポートフォリオに組み込む新たなアプローチにより、生保頑健運用問題を上記の消費と長期証券投資の頑健最適化問題の枠組みに位置付け、最適運用の近似解析解を与えた。しかし、アフィン2ファクター証券市場モデルの実証分析は株式指数と国債の価格過程を近似し得ないことを明らかにしたほか、近似解析解が複数候補存在しうるという二つの大きな問題点が露呈した。 そこで、生保運用問題から銀行及びGPIFの運用問題に移行する当初計画を変更し、これら二つの問題点を克服した基本モデルの構築に注力することとした。先ず、証券市場モデルを一般次元のアフィン潜在ファクター証券市場モデルに一般化し、相対的危険回避度一定効用投資家の消費と長期証券投資の最適化問題に対し近似解析解を与え、複数候補解の中から真の解を識別するための十分条件を示した。そして、相似拡大的頑健効用投資家がアフィン潜在ファクター証券市場モデルの下で消費と長期証券投資を頑健最適化する問題に対し近似解析解を導いた後、同基本モデルを応用して、生保の頑健運用問題に対し最適運用の近似解析解を導出した。
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