研究課題
本研究の目的は、ミクロ計量経済学の政策評価分析を用いて、資本自由化(規制)と為替制度の経済パフォーマンスへの影響を分析することである。平成29年度では、藤井隆雄氏(神戸市外国語大学)と共に、固定相場制の財政規律への因果効果を政策評価分析の手法を用いて検証した。固定相場制は財政規律を高めるのか、それとも低下されるのか。この問いに答えるために、本研究では、1990年から2010年の期間のReinhart and Rogoff(2004)の実際の為替制度データを用いて、固定相場制への制度変更のケースを識別し、反実仮想のアウトカムを推定するためのノンパラメトリック手法であるSynthetic Control Methods(SCM)を用いて、ケースごとの固定相場制のプライマリーバランス(PB)に与えるトリートメント効果を推定した。加えて、ケースごとのSCMから得られたデータを用いてDifference-in-differences (DID)分析を行うことによって、固定相場制の財政規律に与える平均トリートメント効果も推定した。本研究から次の主要な結果が得られた。第一に、固定相場制は財政規律を高めている場合もあれば、低下させている場合もあったので、固定相場制から財政規律への影響はケースバイケースであり、異質性がある。第二に、最近の先行研究が示しているように、固定相場制は平均的に財政規律が低いという事実は見出せなかった。むしろ、固定相場制を採用することによって金融政策の自由度が喪失した国では、固定相場制は平均的に財政規律を高めていた。第三に、1999年にユーロに通貨統合した10カ国では、一般的に言われているのとは逆に、1999年から2004年の期間、通貨統合は平均的に財政規律を高めていた。上記の研究を基に2本のディスカッションペーパーを作成した。
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Graduate School of Economics, Kobe University Discussion Paper
巻: No. 1813 ページ: 1-63
巻: No. 1814 ページ: 1-66