研究課題/領域番号 |
26380402
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
山嵜 輝 法政大学, 経営学部, 准教授 (60633592)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ファイナンス / デリバティブ / 資産価格理論 / 確率解析 / レヴィ過程 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、先ず、前年度からの継続研究として、金融資産の収益率が時間変更型レヴィ過程(time-changed Levy processes)に従う場合の離散時点観測型の経路依存デリバティブの解析的な価格評価手法に関する研究の仕上げを行った。この研究成果を纏めた論文は学術雑誌Applied Mathematical Financeに受理・掲載された。 次に、非連続平均回帰過程(レヴィ過程を変動因子とするOU過程)をボラティリティ変動モデルに採用した資産価格変動モデルであるBarndorff-Nielsen and Shephardモデルを拡張した一般化Barndorff-Nielsen and Shephardモデルを提案し、その下で各種デリバティブの解析的評価手法を開発した。この一般化モデルでは、オリジナル・モデルにあるブラウン運動の因子をレヴィ過程へと拡張したことによって、オリジナル・モデルの欠点(現実市場とは逆のボラティリティ・スマイルを描く特性)を克服し、なおかつ柔軟なモデル選択ができる汎用性があることが長所である。また、一般化モデルの下でプレーンバニラ・オプションのみならず、離散時点観測型のバリア・オプションやルックバック・オプションなどの解析的評価手法を導出した。研究成果はワーキングペーパーとして公表しており、現在、海外学術雑誌に投稿中。 さらに、期待効用最大化に基づく交換経済の資産価格モデルであるルーカス・モデルの研究を行った。複数資産の配当流列が非負レヴィ過程や非連続平均回帰過程(レヴィ過程を変動因子とするOU過程)で与えられるときの均衡資産価格を求めると同時に、その経済における無リスク金利や市場ポートフォリオ、各種資産のベータやアルファを導出した。研究成果はワーキングペーパーおよび国内ワークショップで発表し、現在、海外学術雑誌に投稿中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり、平成26年度は3つの具体的な研究テーマに取り組んだが、1つ目の「時間変更型レヴィ過程の下での経路依存デリバティブの価格評価の研究」は海外学術雑誌への受理・掲載を区切りに研究完了としている。2つ目の「一般化Barndorff-Nielsen and Shephardモデルに関する研究」と3つ目の「レヴィ過程のルーカス・モデルへの適用に関する研究」は、研究成果を論文に纏め、投稿中なので査読者の返答を待つ状況である。研究計画としては、3ヵ年計画の1年目を経過した時点では、研究の進捗状況および達成度は当初計画に沿ったものであり、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前述の2つ目のテーマ「一般化Barndorff-Nielsen and Shephardモデルに関する研究」と3つ目のテーマ「レヴィ過程のルーカス・モデルへの適用に関する研究」は、論文査読の過程で査読者の指摘事項に対応する、もしくは掲載拒否されたときには論文内容を再考して改善した後に、他の論文誌へ再投稿する予定である。 また、平成27年度の新たな研究テーマとして、経済変動(マクロの消費量と一企業のキャッシュフロー)がジャンプ拡散過程(斉時的な伊藤=レヴィ過程)に従う場合の企業の最適配当政策と均衡株価の決定理論について取り組む予定である。この問題はジャンプ拡散過程の下でのsingular control問題として特徴付けすることができる。マクロの消費動向が一企業の株価や配当政策に与える影響や投資家と企業の相互の動態が均衡株価に及ぼす影響を分析するための理論的枠組みを提供したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の国内出張(大阪大学)で予定よりも旅費が掛からなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
5,805円と大きな金額でないため、書籍代やプリンターインク代、コピー用紙代などに使用する予定。
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