• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

ソブリンCDSのプレミアムと整合するリスク フリー・レートの推定手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26380404
研究機関武蔵大学

研究代表者

神楽岡 優昌  武蔵大学, 経済学部, 教授 (40328927)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードリスクフリー・レート / クレジット・デフォルト・スワップ
研究実績の概要

2014年度は,日本国債のスポットレートと参照体を日本国とする日本円建てのCDSプレミアムからリスクフリー・レートを推定する方法を確立した.しかし,そのモデルはCDSの売り手のデフォルト・リスク(カウンターパーティ・リスク)の効果を無視していた.2015年度はカウンターパーティ・リスクの効果を定量化し,その影響を受けないリスクフリー・レートの推定方法を開発した.ソブリンCDSは参照体が共通であっても対象とする通貨が異なるとプレミアムも異なっており,常に外国通貨建てのプレミアムが自国通貨建てのプレミアムよりも高い.この差異はCDSのカウンターパーティ・リスク(売り手のデフォルト・リスク)に起因する.具体的に説明すると,ドイツ連邦共和国を参照体にした米ドル建てのCDSのプレミアムはカウンターパーティ・リスクの影響を受けないが,ドイツ連邦共和国を参照体にしたユーロ建てのCDSのプレミアムはカウンターパーティ・リスクの影響を受ける.米ドル建てのCDSの価格評価にはその米ドル建てのリスクフリー・レート用いるが,その推定には米国を参照体にしたユーロ建てのCDSプレミアムとユーロ建てのリスクフリー・レートが必要になる.このように推定方法は入れ子構造になっており複雑であるが,実証分析の結果,ドイツ連邦共和国と米国のデフォルト強度,ユーロ建ておよび米ドル建てのリスクフリー・レートの同時推定に成功した.ドイツ連邦共和国を対象にしたユーロ建てのCDSプレミアムを用いて,カウンターパーティ・リスクの推定をおこなった.推定結果は,ヨーロッパのソブリン危機を経験するまでは売り手のデフォルト・リスクは低く見積もられていたが,ソブリン危機の深刻化と共にCDSの売り手のデフォルト確率は急上昇し,2012年7月には最高値の0.67となった.その後は低下するものの0.35から0.55の範囲を推移している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2015年度は日本以外の外国を対象にソブリンCDSからリスクフリー・レートを推定することを計画していた.研究は予定通り進み,ドイツ連邦共和国を対象にモデル化と実証分析を終了した.そのモデル化では,当初想定していなかったカウンターパーティ・リスクを対象に,その単純なモデル化に成功した.リスクフリー・レートおよびCDSのプレミアムを決定するデフォルト強度は非確率関数としたが,それらを確率変数への拡張したモデルの予備分析では,2種類の確率変動モデルの構築と数値計算技法の開発を行っている.このことから当初の計画より早く進捗していると判断する.

今後の研究の推進方策

2015年度までに開発したモデルでは,リスクフリー・レートとデフォルト強度(CDSプレミアムを決定するパラメター)を非確率変数として取り扱ってきたが,それらを確率変数に発展させてモデルの拡張をおこなう.確率変動モデルはBlack-KarasinskiタイプとCox-Ingersoll-Rossタイプの2つを対象にする.これらのモデルは,将来のリスクフリー・レートやデフォルト強度の分布特性が全く異なっており,少なくともいずれか一方がマーケットに適合すると期待している.
実証研究はドイツ連邦共和国を対象におこなう.そのために収録期間を2015年末までに拡張して,CDSプレミアム,国債のスポット・レートのデータベースの整備の必要があるが,原データはすでに入手できている.確率変動モデルのキャリブレーションが最も困難なフェーズと予想しており,プログラムのモジュール化をおこなって実証分析の効率化を図る.キャリブレーションは数値計算を多用するため,その計算負荷が高い.そのため現在用いているPCではパフォーマンス不足となる懸念がある.その際は新たなワークステーションの購入が必要になる.それ以外の点においては研究計画を遂行する上での問題や障害はないと判断できる.

次年度使用額が生じた理由

データベースの購入(ドル建て)で想定したレートよりも円高であったため.

次年度使用額の使用計画

データベースの購入(ドル建て)を予定しており,為替変動に対する予算として計上する.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Common dynamic factors in driving commodity prices: Implications of a generalized dynamic factor model2016

    • 著者名/発表者名
      Yusho Kagraoka
    • 雑誌名

      Economic Modelling

      巻: 52 ページ: 609-617

    • DOI

      10.1016/j.econmod.2015.10.005

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi