研究課題/領域番号 |
26380405
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
浅井 義裕 明治大学, 商学部, 講師 (60433645)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 保険 / リスクマネジメント |
研究実績の概要 |
東日本大震災以降、家計の震災に対する備え、「リスクマネジメント」に注目が集まっている。保険リスクマネジメント分野では、リスクマネジメントは、「ロスコントロール(耐震補強など)」と「ロスファイナンス(保険など)」に大別されるが、家計の金融行動という側面から、耐震補強や地震保険の購入を分析した研究はほとんど存在していない。そこで、世界で最も大地震が起こるわが国の家計データを用いて、家計の保険需要の研究を進める。得られる成果は、学術的な貢献だけではなく、「どのようにすれば、災害に備える家計を増やすことができるのか?」という、政策的な含意を持つものとなるものと考えている。 初年度は、研究実施計画の通り、関連する研究のサーベイを進めた。まず、家計の保険に関する研究のサーベイを進めた。また、「リスク回避」、「双曲性」、「不確実性」や「曖昧性の回避」などについても、先行するアンケート調査のサーベイを行い、家計の保険リスクマネジメントを明らかにするうえで、実施すべきアンケート項目について検討を行った。次に、家計の金融行動に関する研究を調べていく上で、家計の金融リテラシーも重要な切り口であることも明らかになり、従来の研究計画に加えて、金融リテラシーのサーベイも進めた。そこで、現在は、金融リテラシーも含めたアンケートを作成し、現在は質問項目の検討をしている。また、予備的位置づけの調査で行ったアンケートの質問項目の修正、削除なども検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保険リスクマネジメントに関する、行動経済学的なアプローチの先行研究やアンケート項目のサーベイを進めることができた。また、サーベイを進める上で、金融リテラシーという新たな観点も検討することとなり、先行する研究のサーベイやアンケート項目についても検討を進めている。つまり、アンケート実施に向けて、アンケート項目の検討まで進捗したため、概ね当初の研究計画通りと評価できる。一方で、今年度に実施する予定であるアンケートの実施までは進まなかったため、当初の計画以上に進展しているということもない。 今年度は、家計の保険需要と関係する、中小企業の経営者の保険需要に関する研究成果の一部も公表した。中小企業では、経営者の生命保険が、「企業の事業承継(企業金融)の側面」と、経営者の家族のための「家計の保険」という2つの側面がある。そこで、浅井義裕 (2015) 「中小企業の保険需要とリスクマネジメント-アンケート調査の集計結果-」『明大商学論叢』第97巻 第4号 pp.45-82などで、生命保険需要の推計などを行った。その結果、生命保険に節税効果を期待している企業ほど、生命保険需要を高める傾向があることが分かった。また、経営者の退職金を考えている企業ほど、生命保険需要を高める傾向があること、スムーズな事業承継を意識している企業ほど、生命保険需要を高める傾向があることを発見している。得られた結果は、今後実施する家計の保険リスクマネジメントのアンケート調査と分析の結果と比較し、特徴を明らかにしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
保険リスクマネジメント論の教科書の前提となることが多い、「ロスコントロール」と「ロスファイナンス」は代替的であるという説明の妥当性とその限界を確認するため、実証的な検証を行う予定である。また、行動経済学的な観点から、家計の地震保険に関する意思決定を実証的に検証する予定である。さらに、家計の金融リテラシーという文脈の中で、地震に対する保険リスクマネジメントも位置づけようと試みる予定である。 平成27年度は、前年度までの先行する研究やアンケート調査の結果に基づき、アンケートを送付・回収し、回帰分析の準備まで進める予定である。従来存在したデータ上の制約などから、家計のリスクマネジメント、地震保険購入の実態が検証できない状況を解消するために、インターネット調査会社に委託して、アンケート調査を実施する予定である。また、家計の意思決定について最も重要な時期と考えられる、大学生など若年層の保険リスクマネジメントの選択や金融リテラシーについての分析も実施する予定である。平成28年度以降は、平成27年度までのアンケート結果の分析、論文の執筆を進め、国際学会や米国などの大学のセミナーで研究を報告し、改善をした上で、海外の学術雑誌などへ投稿を始めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加の旅費で計上した分が、大学の研究費などから支出することができたため、予定していた金額から、旅費の分だけ利用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度、もしくは平成28年度にアンケート調査を実施するため、当初の予定よりもアンケートでの質問数を増やす予定であり、研究の拡充に役立てることができるものと考えられる。
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