研究課題/領域番号 |
26380405
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
浅井 義裕 明治大学, 商学部, 准教授 (60433645)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中小企業金融 / 生命保険 / 保険需要 / 家計 |
研究実績の概要 |
当該年度は、主に、中小企業金融における生命保険需要の役割の実証分析を進めた。浅井義裕 (2015) 「中小企業金融における生命保険解約の実証分析」 『生命保険論集』 第192号 pp.31-48では、信用リスクの高い企業、銀行との関係が強固でない企業ほど、経営者の生命保険を解約していることを発見している。また、浅井義裕 (2015) 「わが国の中小企業における生命保険需要」 『生活経済学研究』 第42号 pp.1-14では、企業規模が大きい企業ほど生命保険需要が少ないこと、信用リスクが低い企業ほど生命保険需要が多いことが明らかになった。つまり、上記の研究は、従来注目されることのなかった、中小企業金融において、生命保険が一定の役割を果たしていることを明らかにし始めているものと評価できるだろう。 また、当該年度は、中小企業の地震保険についても分析を始めている。浅井義裕 (2015) 「中小企業の3割が地震保険に入れず」 『月刊金融ジャーナル』 2015年11月号 pp.35-36は、東日本大震災以降に、地震保険を購入しようとした3割の企業が地震保険を購入できなかったことを紹介している。上述の研究の成果を踏まえて、家森信善編 (2015) 「はじめて学ぶ保険のしくみ(第2版)」中央経済社の第6章(生命保険)、第7章(保険会社、保険業の未来)、第15章(家計と保険)で、改訂版を出版した。 一方で、一般の家計における地震保険の役割については、実証分析は進められていない。実証的な分析を行い、その成果を出版していくことが、2016年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の進捗状況については、おおむね予定通りに進捗していると評価できる。まず、中小企業の地震保険については、浅井義裕 (2015) 「中小企業の3割が地震保険に入れず」 『月刊金融ジャーナル』 2015年11月号 pp.35-36など、当初の予定より早く、研究の成果を公表することができ始めている。浅井義裕 (2015) 「わが国の中小企業における生命保険需要」 『生活経済学研究』 第42号 pp.1-14では、経営者の退職金を考えている企業ほど、生命保険需要を高める傾向があること、スムーズな事業承継を意識している企業ほど、生命保険需要を高める傾向があることを発見している。また、生命保険に節税効果を期待している企業ほど、生命保険需要を高める傾向があることを明らかにしている。つまり、中小企業経営をしている家計における生命保険の役割を明らかにすることができつつあるなど、当初の予定よりも、成果が上がりつつあるものがある。 一方で、家計における保険の役割、特に地震保険の役割を明らかにすることは、当初の予定よりも成果の公刊が遅れている。2016年度の前半は、家計向けのアンケート調査を実施し、地震保険が震災からの復興にどの程度役立っているのか(役立っていないのか)を実証的に明らかにしようと試みる。2016年度の後半は、実証分析の結果を学会などで報告し、論文の投稿・公表を始める予定でいる。本研究課題の成果は、いままでの研究成果と合わせて、「中小企業・家計における保険の役割」などとして、書籍で公表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度の前半は、家計向けのアンケート調査を実施し、地震保険が震災からの復興にどの程度役立っているのか(役立っていないのか)を実証的に明らかにしようと試みる。既存の研究(姜英英・浅井義裕・森平爽一郎 (2014) 「どのような家計が地震保険を購入しているのか?‐東日本大震災後のアンケートから分かること‐」『金融経済研究』 特別号 pp.77-92)では、東日本大震災以降の全国の地震保険需要についての研究を進めてきた。今後の研究では、リスク回避の程度などを考慮した研究を進めていく予定である。また、従来進めてきた研究では、地震保険金を受け取って、どのように復興が進むことになったのか(あるいは、進まなかったのか)を解明することができていなかったため、2016年度の研究では、地震保険と復興の程度について、分析を進める予定である。 また、本研究プロジェクトを進める過程で、生命保険は金融商品であるにも関わらず、中小企業の資金調達において、生命保険がどのような役割を果たしているのかについて、研究が十分に進んでいないことが明らかになってきた。特に、中小企業では、経営者の高齢化が進み、事業承継をスムーズに進めることが、日本経済の成長にとって、喫緊の課題になりつつある。そこで、2017年度以降の研究では、中小企業金融において生命保険、信託、銀行が、どのような役割を果たしているのか、また果たすことができるのかという可能性について、実証分析をさらに進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査を実施するために必要となる資金が不足するため、資金をためるため、アンケートを最終年度に行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にまとめてアンケート調査を実施する予定である。
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