研究課題/領域番号 |
26380408
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
菅野 正泰 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (00551061)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | システミック・リスク / グローバル金融システム / 相互連関性 / デフォルト連鎖 / ネットワーク理論 / グローバルなシステム上重要な銀行 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、まず、システミック・リスク量を計量化する研究(①)を行った。計量化に適したリスク尺度と個々の銀行の金融システム全体へのリスク寄与度を研究し、グローバル金融危機前後のわが国金融システムのリスク量と寄与度を計算した。成果をまとめた論文は査読付国際学術雑誌に掲載された。 次に、システミック・リスクの重要な要素である相互連関性を、ネットワーク理論とデフォルト連鎖理論を使いモデル分析した。この分析は、銀行間取引の取引先別残高の推定、銀行間ネットワークの分析、およびデフォルト連鎖モデルの開発から構成される。わが国金融システムを対象とした分析(②)では、各種ネットワーク統計量を計算し、3大メガバンクグループが相互連関性の観点で他行を凌駕していることを示し、現行の国際金融規制(バーゼルⅢ)対応の正当性を検証した。また、グローバル金融システムの計量分析(③)では、Bankscopeのデータを使い、全世界200超の銀行から構成される金融システムのデフォルト連鎖分析を行った。この分析の主な成果として、金融危機発生時に見られたデフォルト連鎖の事象を実データを使用したモデル分析で実証した点が挙げられる。 更に、グローバルな損害保険市場における再保険取引を介在したデフォルト連鎖の分析(④)を行った。損害保険市場の相互連関性は金融証券市場と比較すると僅少であるが、金融危機以上の大きなストレスを市場を構成する再保険会社に一斉に加えると、デフォルト連鎖の可能性があることをモデル分析で示した。 ②と③の成果は審査付国際学会で発表し、何れも会場から好意的な評価を受けた。それぞれ別の論文としてまとめて、国際学術雑誌に投稿中である。また、④の成果についても論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿中である。結果、平成26年度は公刊論文1編(①)、投稿中の論文3編(②③④)の成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りの内容を研究し、成果を論文にまとめ、1本は公刊、3本は投稿中の段階にあるため。
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今後の研究の推進方策 |
国際学術雑誌に投稿中の論文3本の受理を目指し、必要に応じて改訂作業を行う。また、計量分析の精度を上げるために、銀行間取引の個社別残高の推定やデフォルト連鎖モデルの改良に取り組む。更に、新たな研究として、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場等のシステミック・リスク分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額が購入予定物に対して不足したため、次年度にまわすことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
図書等の支払いに充当する。
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