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2015 年度 実施状況報告書

銀行企業間の関係性がマクロ経済に与える影響についての実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 26380416
研究機関甲南大学

研究代表者

中島 清貴  甲南大学, 経済学部, 教授 (00367939)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードloan level data / termination / causal inference / duration effect
研究実績の概要

平成27年度は,銀行と借入企業との関係がどのような要因で切断され,そのマクロ的な影響はどのようなものであったのか,という観点からの分析に注力した.この分析を通じて,銀行と借入企業の関係性の解消は,1990年代後半に急増しており,それは,90年代後半の銀行危機時に,銀行の財務リスクの増大に伴い,低収益の借入企業との関係を解消していたことに起因していることを実証した.また,銀行と企業の継続期間という観点からは,金融システム安定期には,継続期間が長いほど銀行と企業の関係性は安定化する一方,金融システム不安定期には,継続期間が長くても関係性が切れ易くなってしまうことも実証している.分析結果は,論文“Termintion of Bank-firm Relationships”としてまとめられ,現在,専門雑誌に投稿中である.
平成27年度の分析のもう1つの方向性は,銀行主導での関係性の解消を“貸し剥がし”として定義し,貸し剥がしにあった借入企業が投資プロジェクトをファイナンスできたかのか,また,できなかったのであれば何故なのか,という点を実証している.この分析を通じて,貸し剥がしにあった企業が,新しい別の銀行との関係性を構築出来ないか,関係性を継続している既存の取引銀行からの追加的な融資が無い場合には,借入企業の投資が落ち込み,マクロ経済に深刻な影響を与えることの可能性を指摘している.この分析結果は,論文“The Real Effects of Bank-Driven Termination of Relationships”としてまとめられ,Journal of Banking and Finance に投稿の後,現在,エディターより改訂後再投稿をするよう提案がきている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

[研究実績の概要]で記載したように,現在,2本の論文を専門雑誌にすでに投稿しており,そのうち1本の論文はエディターからの改訂要求と再投稿の提案を受けて改訂をしている最中にある.
この2本の論文は,銀行と企業の関係性の切断とそのマクロ経済への影響に着目した分析であるが,同時並行的に,銀行が業績の良くない企業に対してどういった貸出行動を行ってきたか,という観点からの分析も行ってきた.平成28年度中はこの分析結果を論文としてまとめ専門雑誌に投稿するための作業に心血を注ぎたいと考えている.

今後の研究の推進方策

本研究ではこれまで,①銀行と企業の関係性の切断とそのマクロ経済への影響,そして②銀行が業績の悪い企業に対してどういった貸出行動を行ってきたか,という2つの観点からの分析を行ってきた.
①は銀行貸出におけるextensive margin に着目した分析,②はintensive margin に着目した分析と言える.つまり,②は,業績の悪い企業との関係性が継続しているという前提での銀行貸出行動の分析にあたるが,今後は,金融政策と銀行のリスクテイキングの観点から,銀行が業績の悪い企業に対してどのような貸出行動を行ってきたのか,についての分析をしていく予定である.この分析を成功させるためには,金融政策変数の外生的な要因を識別する必要があるが,今後は,非伝統的金融政策の外生的な要因の識別を行った上で,銀行のリスクテイキングという観点から邦銀がどういった貸出行動を行ってきたのかについての分析を行っていく.

次年度使用額が生じた理由

現在,2011年度までの分析用データを保有している.本来的には,アベノミクス以降の直近の銀行貸出行動を分析すべく2015年度までのデータを購入する予定であったが,平成27年度は,2011年度までの銀行と企業の関係性の切断とそのマクロ的な影響についての分析に注力していた.銀行と企業の関係性の切断の問題は1990年代後半と2000年代前半が深刻であるという分析事情があったため,追加的なデータを購入しなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である.

次年度使用額の使用計画

本年度は,非伝統的金融政策と関連させた上で,銀行のリスクテイキングという観点から,アベノミクス以降の直近の銀行行動を分析する予定である.そのため,可能な限り直近までの銀行企業間の貸出関係についてのデータベースを構築すべく,関連データの購入に研究費を充当する予定である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] An Econometric Evaluation of Bank Recapitalization Programs with Bank- and Loan-level Data2016

    • 著者名/発表者名
      Kiyotaka Nakashima
    • 雑誌名

      Jornal of Banking and Finance

      巻: 63 ページ: 1-24

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The Real Effects of Bank-Driven Termination of Relationships: Evidence from Loan-Level Matched Data2016

    • 著者名/発表者名
      Kiyotaka Nakashima and Koji Takahashi
    • 雑誌名

      Social Science Research Network

      巻: 2619356 ページ: 1-61

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Termination of Bank-Firm Relationships2016

    • 著者名/発表者名
      Kiyotaka Nakashima and Koji Takahashi
    • 雑誌名

      Social Science Research Network

      巻: 2711974 ページ: 1-51

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 銀行企業マッチングデータを利用した貸出供給・需要ショックの簡便な識別方法についての覚え書き2015

    • 著者名/発表者名
      中島清貴
    • 雑誌名

      甲南経済学論集

      巻: 56 ページ: 89-93

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] A Potential Pitfall in Estimating a Nonliner Function of Bank Lending: A Critical Evaluation of Unnatural Selection2016

    • 著者名/発表者名
      中島清貴
    • 学会等名
      日本経済学会春季大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2016-06-18 – 2016-06-19
  • [学会発表] Unviable Relationship and Bank Lending: Evidence from Loan-level Matched Data2015

    • 著者名/発表者名
      中島清貴
    • 学会等名
      日本金融学会秋季大会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2015-10-24 – 2015-10-25
  • [学会発表] Termination of Bank-Firm Relationships2015

    • 著者名/発表者名
      中島清貴
    • 学会等名
      日本金融学会秋季大会
    • 発表場所
      東北大学(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2015-10-24 – 2015-10-25
  • [学会発表] Unviable Relationship and Bank Lending: Evidence from Loan-level Matched Data2015

    • 著者名/発表者名
      中島清貴
    • 学会等名
      日本経済学会春季大会
    • 発表場所
      新潟大学(新潟県・新潟市)
    • 年月日
      2015-05-23 – 2015-05-24
  • [備考] Kiyotaka Nakashima

    • URL

      http://sky.geocities.jp/kiyotaka_nakashima/

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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