本研究は、アメリカ合衆国における社会保障・社会福祉制度において、経済的な困窮者に対する食糧支援 がどのように行なわれてきたのかという問題を社会経済史的に考察することを目的としてきた。特に最大の食糧支援プログラムであるフードスタンプに焦点を当てて、それが1930年代のニューディールの農業政策の一環として始められ、「貧困が再発見」された1960年代から恒常的な法律の下で拡充を続けた歴史的な状況を明らかにした。その後、1990年代後半から福祉改革が進められる中で、農務省の主導の下でフードスタンプ(2008年に「補足的栄養補助」(SNAP)と改称)の政策的な位置づけが大きく変容したことを考察した。
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