研究課題/領域番号 |
26380419
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
平沢 照雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70218775)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 電球産業 / 構造改善 / 事業転換 / 洋食器産業 / 精密機械産業 |
研究実績の概要 |
本年度は電球工業において展開されたグローバルな競争の実態解明を目的として、(1)東アジア開発途上国(韓国、台湾など)の電球メーカーとの競争関係、(2)日本国内電球メーカーの対応、(3)他の産業企業との比較分析に重点をおいて研究を進めた。このうち(1)に関しては、当該諸国の電球メーカーが急速に台頭するに至った1960年代後半~1970年代における各国の輸出支援政策の分析を進めるとともに、関連する生産・輸出統計などの調査、収集を行った。また(2)に関しては、対応策として自主規制撤廃、構造改善、事業転換、海外移転などをあげることができるが、このうち特に構造改善と事業転換に関する資料調査および収集を重点的に行った。さらに(2)と密接に関連させる形で(3)については洋食器および軽機械工業、精密機械産業の産業実態および国際競争への対応方法に関する資料調査および収集を重点的に行った。その研究成果として、(2)に関しては調査過程で新たな史実の発見を行うことができた。またこの調査過程で、かつて電球生産の拠点(=輸出団地)を形成しながら事業転換過程で消滅するに至った地域において、新たにLED電球の開発・製造が試みられていることが明らかとなり、その取り組みに関する研究も進めることができた。さらに(3)に関しては、特に電球工業と同じ時期に進められた洋食器産業における構造改善への取り組みに関して、また精密機械産業については長野県南部地域における産業実態の解明に関してそれぞれ研究を深めることができ、電球工業との比較分析を進めるうえでの基盤を整えつつある。これに対して(1)に関しては、各国の輸出支援政策に関しては調査が進んだものの電球産業に対する政策支援という点に限定した形での踏み込んだ展開に関しては資料の発見に至らず十分な成果をあげることができなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」において記したように、平成26年度においては主に3つの方面から調査・研究を進めることができたが、このうち(1)の東アジア開発途上国の電球メーカーに関しては、電球産業に対する特定の政策支援に関しては資料上の制約もありその解明がやや遅れていると自己評価している。これに対して(2)の日本国内電球メーカーの対応に関しては、現地調査の実施により史実の解明が順調に進むとともに、研究開始時点では把握していなかった新たな取り組みである旧電球産地における新型LED電球の開発・製造にも着目することができたことから、この点に関しては計画以上に進んでいると自己評価している。また(3)の他の産業企業との比較分析に関しては、洋食器産業に関する資料調査、分析および精密機械産業に関する現地での資料調査を研究計画にそった形で進めることができた。およそ以上の点を総合した場合、全体的には本研究がおおむね順調に進展していると自己評価することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
先に記した自己点検・評価にもとづき、今後は以下の点に考慮しつつ研究を推進してゆきたい。まず(1)の東アジア開発途上国の電球産業の政策および実態分析に関しては、当該地域出身の研究者などの助言や情報収集をより積極的に行うなどによって、これまでの資料制約をできるだけ克服する形で研究を進める方針である。また(2)の日本国内電球メーカーの対応に関しては、新型LED電球の開発・製造についての現地聞き取り調査をさらに進める。また本研究計画では、電球メーカーの国内他地域への生産移転に関する調査の1つとして鹿児島でのそれを進めることを計画しているが、昨今問題視されている桜島の火山活動の活発化などの事情でそれが困難な場合には同社の別の地域での調査に変更する形で研究を進めることを予定している。さらに(3)に関しては、洋食器産業に関する現地資料調査を新たに行うとともに、精密機械産業に関してはこれまでの現地調査を継続しつつさらに青森県での調査を追加する形で比較分析をいっそう推進することを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年2~3月にかけて鹿児島市において同地に生産移転を行った電球メーカーの現地聞き取り調査と資料収集を2度にわけて計画していたが、この時期桜島の火山活動が活発化したため安全を考慮して当該地域への出張を延期したことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記調査は平成27年度に実施する予定であるが、桜島の火山活動が沈静化せず危険性が高い場合には同地で活動している電球メーカーの別の地域での調査に変更する形で研究を進めることを予定している。それとともに平成27年度に新たに実施予定である青森、新潟での現地調査に研究費を振り向けることを予定している。
|