研究課題/領域番号 |
26380422
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
邉 英治 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (50432068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金融エリート / 日本銀行 / 考査局長 / 地方銀行 / EBHA / WEHC2015 / 金融史 / 経済史 |
研究実績の概要 |
研究年度第2年目にあたる本年度は、日本の金融エリートに関わる資料収集の作業を継続しつつ、データの解析に注力し、研究成果の一部についてその公開を進めた。 資料収集に関しては、歴代日本銀行考査局長を対象に、教育的背景・キャリアパス・考査局長としての在籍期間・プルーデンス理念・天下り先の変遷・天下り先地方銀行での経営パフォーマンスなどの事項について、国立国会図書館および東京大学経済学部図書館などにおいて情報を集めた。加えて、初年度から分析を続けている歴代大蔵省金融検査部長についても、特に天下り後の銀行経営パフォーマンスに関わるデータを追加的に収集した。 データ解析も順次進めた。分析の結果、以下のような事実が明らかとなりつつある。1)歴代日本銀行考査局長のキャリアパスは相対的に良いものであり、約3人に1人が総裁・副総裁・理事・監事という役員会メンバーにまで昇進している。2)約半数は非金融セクターへ天下りしており、金融機関との接点が多い日本銀行という特質に鑑みると、意外である。3)従来メディアやアカデミズムでイメージ・指摘されてきたよりも日本銀行考査局長経験者は手堅い地方銀行経営を行った(例:大分銀行)。4)日本銀行考査局長としての在籍期間は平均で約24ヶ月であり、歴代大蔵省金融検査部長(約13ヶ月)より長い。 研究成果については、2016年3月にヨーロッパ銀行史学会のワーキングペーパーとして英文で公表したほか、2015年8月に世界経済史会議(於、京都)において、セッションを組織して、その中で発表を行っている。なお、2015年11月に、本研究テーマと関連する学術論文を学内紀要において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本の金融エリートの歴史のうち、主に大蔵省金融検査部長・日本銀行考査局長・財閥系銀行審査部長を対象としている。研究実績の概要で記したように、大蔵省金融検査部長および日本銀行考査局長に関わる部分については、研究はかなりの程度まで進捗している。また、初年度に残された課題としていた天下り先金融機関の経営パフォーマンスについても、主に地方銀行分(なお、都市銀行への天下りは多くない)については分析を進めることができ、天下りを受け入れていない地方銀行との比較検討も進めつつある。さらに、研究成果の一部について、査読付きの英文ワーキングペーパー(EABH Papers No.16-01)として公表することができた。 このような進捗状況は、当初の研究計画におおむね沿うものであり、4年間の研究プロジェクトの折り返し地点としては、十分なものであると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、今後も当初の研究計画に沿って、研究を進めていく。すなわち、大蔵省金融検査部長および日本銀行考査局長に関わる部分については、残された課題である天下り先金融機関の経営パフォーマンスの分析の包括化を図るとともに、内部経営者による金融機関の経営パフォーマンスとの比較分析を本格的に進めていく。財閥系銀行の歴代審査部長については、まずは三井銀行・三菱銀行を対象に、基礎的データの収集を継続し、その分析にも着手したい。さらに、シャンドとパース銀行については、イギリス・エディンバラで追加調査を行い、史料収集を進めていく。 研究成果については、2016年3月に公表した英文ワーキングペーパーを上記の研究作業を通じて改善したものをインパクファクターの高い国際ジャーナルへ投稿し、その公表を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
難民問題・IS問題に象徴されるようなヨーロッパ情勢の悪化およびベルギー空港での爆破テロ等不安定な状況を考慮して、イギリス・エディンバラへの史料収集の出張を延期した(日本からエディンバラへの直行便はなく、次の爆破テロのターゲットは乗継予定空港地のアムステルダムもしくはロンドンという噂が当時広まっていた)。 また、英文ワーキングペーパーの査読を受けて行う原稿の修正作業に、言語面で予想以上の時間がかかったため、国際一流ジャーナルへの投稿までこぎ着けることができず、そのための英文校正・投稿料が先送りとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
ヨーロッパ情勢は落ち着きを取り戻しつつある。2016年夏ないしは2017年春にイギリス・エディンバラに出張できる予定である。また、英文ワーキングペーパーは2016年3月に公表にこぎつけており、国際的なコメントを踏まえてさらなる修正を施して確実に投稿する予定であり、それに伴って英文校正・投稿料等も使用できる。
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