研究最終年度にあたる今年度は、本プロジェクトの研究成果のとりまとめに向け、研究代表者のサバティカル期間を利用して、ウプサラ大学において約2ヶ月間の在外研究を実施し、金融エリート史研究に精通している同大学のMikael Wendschlag博士と国際共同研究を遂行しつつ、同氏から専門的知識の提供も受けて、それらとともに、これまでの研究で明らかとなった諸事実を組み合わせ、国際比較の観点を主眼におきつつ、論文化及び著書化を進めた。 研究の結果、日本の銀行監督トップを務めた金融エリートの歴史には、日本と同じ官僚国家であるスウェーデンと比較して、主に次のような異同があることが明らかとなった。共通点:①1990年代金融危機における機能不全、②特定の学歴保有者の優遇、③大手銀行と比較して低サラリー。相違点:①日本における天下り慣行とスウェーデンにおける定年勤務、②日本における汚職(収賄)とスウェーデンにおける高いシビル・サーバント意識、③日本における新規学卒採用(金融機関勤務未経験)とスウェーデンにおける金融機関勤務経験者の採用慣行。 なお、本研究成果の一部は、国際ジャーナル(Social Science Japan Journal)に投稿済みであり(Eiji Hotori and Mikael Wendschlag "The formalization of banking supervision in Japan and Sweden: A comparative study")、2018年12月23日付で掲載決定の査読結果を得た。また、別の一部の研究成果についても、国際ジャーナルへの投稿準備をほぼ完了している。さらに、本研究成果の一部を、国際共著書として国際的学術出版社より刊行する予定であり、主なパートの執筆は終えている。
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