研究課題/領域番号 |
26380424
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
根岸 秀行 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30192694)
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研究分担者 |
丸山 幸太郎 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40319116)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 帰還移民 / 戦後復興 / 再定着 / 事業化 / 産地化 / 既製服 / 引揚者 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、研究代表者と研究分担者は連携して、戦後復興期に進んだ岐阜アパレル産地の形成過程に関し、岐阜産地内外当事者の証言および資料所蔵機関の文書資料を中心に調査をすすめた。 1.調査と分析 岐阜アパレル産地内の資料所蔵機関とくに岐阜県図書館において、1950~60年前後の地元新聞および地元経済誌、業界名簿、また専門業界誌を中心に、岐阜産地のアパレル取引に関する調査を行った。産地外においては、前年に引き続き国立公文書館所蔵の引揚者記録の撮影と記録化を行うとともに、国立国会図書館等で関係資料を収集した。 また、岐阜産地内外の当時の実情を知る経営者のうち、インタビュー対象となり得る者を抽出してヒアリングを実施、その記録の整理を行った。具体的には、産地内の元アパレル問屋経営者ら4名、産地外(富山市)の2名に対する個別インタビュー(一部は反復インタビュー)とともに、これらを含む座談会形式のヒアリングを実施し、記録化した。 以上を通じて、岐阜産地経営者の集団化の実態、取引の状況、またアパレル消費の拡大に関する資料を収集した。 2.成果発表 以上の調査等に依拠し、研究代表者・研究分担者それぞれの所属大学の研究誌において、上記のインタビュー記録の一部を掲載した。また、1950年代初頭、敗戦直後の政治・経済的な混乱期から漸く制度的安定を回復しつつあった戦後復興期に、引揚者集団の既製服事業者集団への転化が実現されたことを明らかにするとともに、これが同時に、戦後岐阜アパレル産地化への契機となったこと、帰還移民の日本国内への再定着過程でもあったことを展望した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度計画は、国立公文書館の岐阜への引揚者資料の記録化が2016年度前半までに完了の見込みとなるなど、おおむね順調に進行している。 また、インタビューによる記憶の記録化作業も、研究分担者の尽力によって、対象者の抽出、インタビュー実施、文字起こしのいずれも順調である。さらに、研究代表者・分担者による成果公表もそれぞれの大学紀要等を中心に実現されている。 ただし、本研究の申請段階において指摘した通り、戦後70余年を経過する中でインタビュー環境は年々厳しくなっている。2015年度、反復インタビューを予定していた前年度インタビュー対象者(岐阜市商工行政担当)が急死したため、産地育成への行政の関与については文書資料で補わざるを得なくなった。 これは、現在(2016年)が戦後復興の当事者の証言記録が可能な最終段階であること、それゆえに本研究に大きな意義があることを証明する。これは同時に、対象範囲をさらに拡大し(最終年度ではあるが)対象者を出来る限り追加する必要性を物語っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度であるため、作業の中心は、課題に明確に対応した研究報告書の作成と発表、補充的な調査におかれる。 1.文献調査・研究、当事者インタビューの補充(追加)調査 研究代表者・研究分担者は、それぞれ当初計画と齟齬をきたした箇所(インタビュー対象者の逝去など)を中心に産地内・外(東京含む)の各資料所蔵機関において、補充的な調査と当事者インタビュー(3名6回分と想定)を実施し、取りまとめを行う。 2.研究の総括と成果公開 研究代表者・研究分担者は、前年度までに研究対象地の研究動向を考慮し、また補充調査・インタビューの成果を反映させて、第2次大戦後という特定の時期、岐阜という特定の場において、アパレル中小集積が全国的「産地」に成長し得た要因について、研究報告書等のかたちにとりまとめる。同時に、この成果を岐阜の地域学会におけるシンポジウム等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度後半に、反復ヒアリングを予定していた前年度インタビュー対象者(岐阜市商工行政担当)が急死したため、これに相応するインタビュー作業、文字起こし作業と分析は28年度にずれ込むこととなった。この結果、次年度使用額が発生することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
岐阜アパレル産地育成への岐阜市商工行政担当の関与のあり方については、文書資料で補うとともに、インタビューの対象範囲を拡大し、(最終年度ではあるが)対象者を出来る限り追加選定するとともに、こうして追加したインタビューの記録化とその文字起こし作業にあてる計画である。
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