今回の課題では、まず貿易商社は賃金やキャリアパスにおいて学歴格差が希薄な一方で、他の産業に比較して従業員に占める学卒者の比率が高いという特徴を明らかにした。続いて貿易商社が多数の学卒者を雇用した理由として本課題では従業員の規範意識に着目し、明治36(1903)年~昭和23(1948)年の三井物産「社報」を分析し、不祥事の大部分は中初等教育修了者が起こしており、学卒者による不祥事は少数であったことが判明した。それは三井物産だけではなく兼松や古河商事も同様であり、不祥事の発生には明確に学歴格差が存在し、それが高等教育の意義であったと考えられる。
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