本研究は、日本が国際経済関係を強化するべきBRICS諸国のうち、ブラジルにおける経済発展や環境保全に対する日本人・日系人及び日系企業の国際貢献をみるにあたって、第二次世界大戦前から戦後にかけて、武藤山治(1867-1934)ほかが経営した鐘淵紡績株式会社(鐘紡)により、対伯直接投資がなされた事例を中心に、国際経営史研究として実証していくことで、今後の日伯経済関係の強化に資していくことを目的としている。 平成29年度は、特に明治末から昭和初期の鐘紡の経営者であり、さらに鐘紡の子会社として南米拓殖株式会社(南拓)を設立(1928年)し、ブラジル・アマゾン川流域への移住事業を推進した武藤山治の経営思想及び政治思想に注目し、彼の国際的視野の形成、日本人移住にかかわる対米・対中・対伯観、鐘紡経営とブラジル進出との関係等について、考察及び研究成果の報告を進めるとともに、彼の生誕150周年の記念シンポジウムのパネラーとしても事績を公表した。 そして、本年度は最終年度でもあるため、南拓の設立と第2次世界大戦中までの経営状況、戦後の鐘紡のブラジルへの再進出、南拓の移住事業の中心地であったパラー州トメアスの戦後の農業経営、そのトメアスにおけるアグロフォレストリー(森林農業)の実践による農林業と環境保全の両立の状況などについて、学会誌でも紹介することで、総括と研究成果の公表につとめた。 さらに、研究期間内においては、トメアスを中心としたブラジルにおけるフィールドワークと交流、鐘紡や南拓の経営一次資料の収集と研究成果の公表、外国における学会発表や英文論文の公表等も通じて、研究成果を広く還元した。
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