研究課題/領域番号 |
26380431
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小山 久美子 長崎大学, 経済学部, 准教授 (60315215)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 標準化 / 米国貿易政策史 / 国際的調和化 |
研究実績の概要 |
本研究は、「標準化」の新視点を導入した米国貿易政策史研究である。1995年にWTO(世界貿易機関)がGATT(関税と貿易に関する一般協定)を強化した形で新設された際に、非関税障壁削減のために各国は様々な変容、変革が求められようになったが、その一つに各国で異なる標準を調和化していく動き(TBT協定成立)があった。標準がグローバルな市場獲得に直接的に関わるようになってきたのであり、そこではISO、IECといった国際機関の場で策定される公的標準(デジュール・スタンダード)が重要になった。 市場が決める事実上の標準(デファクト・スタンダード)を歴史的に重視してきた米国は、貿易政策との関連でデジュール・スタンダードの重要性について、歴史的にいつごろから、どのように認識し始め、どのような対応をとっていったのかについて、平成27年度は米国(ワシントン大学、1999年WTO会議開催のため関連史料を所蔵)や国内の図書館(国立国会図書館ほか)を中心に史料収集を行い、研究を進めた。これにより、米国は1960年代より重要性を認識し始め、次第に官民協調(ただし民間主導)の強化により、貿易政策の一環として標準化政策(デジュール・スタンダード)を重視するように変容してきたことを分析、実証することができた。と同時に、20世紀初に構築された標準化へのスタンスも現在に引き継がれているという結論が得られた。 また本研究は、交付申請書で研究目的の中に、WTO新設時のもう一つの国際的調和化の動きである食品安全管理システム(HACCP)への米国の取り組みの方向性と、標準化に関する方向性との比較対照も行うとしており、これについても平成27年度の分析の結果、方向性の違いに関する結論が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した研究目的の中で、具体的な項目として(1)国際機関ISO、IECへの米国の代表機関、ANSI(米国国家標準協議会)の設立経緯、特徴、理念、関与した主要人物の見解、(2)ISO、IECの設立状況、(3)TBT協定成立(1995年)前の米国の標準化への取り組み姿勢、(4)TBT協定成立後の米国のデジュール・スタンダード重視への軌道修正動向、を挙げ、平成27年度をもって上記項目すべてについて着手、分析を行い、一定の結論が得られた。だが、当初計画予定していたWTOでの史料収集、分析が未遂行のため、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した研究計画・方法に関して、平成28年度は、計画していた史料収集、補足的史料収集、分析、総括、学会発表を行いつつ、得られた成果の一部に関して出版に向けての原稿完成作業を行うとしており(「標準化と国際貿易 -国際貿易体制と米国貿易政策の歴史と現状-」御茶の水書房より発行確定)、平成28年度はそれらに取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の3月から行った米国での史料収集が平成28年4月初旬にわたったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に計画していたWTO(世界貿易機関、ジュネーブ)での史料収集を平成28年度のできるだけ早期に行い、これまで行ってきた分析において未解決の、補足的な事項に関する分析を完了させる計画にある。 その他、本研究をさらに進めるため、学会発表のため、出版本・論文の精緻化を行うために必要な設備備品費、消耗品費、旅費、その他複写代に研究費を使用する計画にある。
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