研究実績の概要 |
本研究は、各国間で異なる標準が非関税障壁となり得るため、WTO(世界貿易機関)の下で製品の仕様、規格等の国際的調和化が益々図られるようになっているという近年の新しい現象を受け、非関税障壁としての標準化の視点から米国の貿易政策史の分析を試みた研究である。従前はデファクト・スタンダード(企業間競争により市場が決める事実上の標準)を重視してきた米国が、特に欧州が標準の調和化を進めていくなか、欧州に対抗すべく、1960年代以降、貿易政策の一環としてデジュール・スタンダード(公的機関で策定される公的標準)にも注力するようになってきたことを明らかにした。 米国では20世紀初頭に標準化政策が開始された。同時期にはISO,IECへの米国の代表機関である「全米標準協議会」(ANSI)の前身も設立された。米国は当時の政策の特徴であるデファクト・スタンダード重視の姿勢を受け継ぎながら、1960年代以降、貿易拡大ためには標準化政策と貿易政策とをリンクさせることが重要であるとの認識を強めていき、デジュール・スタンダードにも民主導の官民協調体制での取り組みを強化し、現在に至っている。 最終年度である本年度は、以上の内容を網羅した拙著「標準化と国際貿易 -国際貿易体制と米国貿易政策の歴史と現状」を御茶の水書房より計画通り刊行した。また、政治経済学・経済史学会秋季学術大会では「貿易政策史 -貿易障壁の変化ー」のタイトルで報告を行った。加えて、本研究成果の内容を含んだ拙稿「貿易自由化への懐疑」が来年度刊行の共著「現代アメリカ経済史」(有斐閣)に所収され、発信されることになった。
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