本年は、かねて作成中であった英文論文を複数のイギリス人の研究者の見解をもとに、修正することを試みた。具体的にはThe 'Decline of guilds and monopoly : with particular reference to Exeter'をイギリス人研究者の意見を入れて以下のような点に修正を加えた。第1点は、本稿の舞台であるエクセタ市の専門家でもありチャリティの専門家の見解を入れ、ギルドとチャリティの関係を整理したこと、第2点は、都市史の専門家たちの意見をいれ、エクセタ市を地方都市と中央政府の関係の近世政治史の中に位置つけたこと、第3点は、経済史家の見解を参照して、イギリス人商人の日本ギルドに関する自由放任主義からの批判的評価を、相対化することを試みたことである。最終年度に当たり固より、「徒弟の世帯からの分離:地方都市の政治的発展との関連で」という課題に今年度だけでこたえうるものではないが、チャリティに関連付けられたことなど、親方世帯におけるギルドを通じての徒弟に対するコントロールからの自立の契機の具体的形態を示すとともに、それが、地方都市の市民革命などわが国でも周知の政治的発展の中で進行したことを今年度の研究は示すこととなった。
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