研究課題/領域番号 |
26380437
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古田 和子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (20173536)
|
研究分担者 |
谷本 雅之 東京大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10197535)
瀬戸林 政孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (10383952)
平井 健介 甲南大学, 経済学部, 准教授 (60439221)
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (60636885)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アジア経済史 / 模倣 / 雑貨 / 商標偽造 / 工業化 / 日本経済史 / 中国 / 台湾 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、メンバー5名による担当地域における雑貨品の製造と流通を考察する作業を行った。5名の専門領域は、代表者・古田和子が日中を中心とする近代東アジア、谷本雅之が戦前期日本、瀬戸林正孝が近代中国、平井健介が日本植民地下の台湾、伊藤亜聖が現代中国である。 近代東アジアについては、19世紀末から20世紀前半期の日本と中国のあいだで拡大した雑貨品貿易を分析した。特に大阪における中小製造業者による近代的雑貨の対中国輸出に焦点を当てて、粗悪品問題や商標偽造問題を外務省記録や中国市場調査報告から明らかにした。戦前期日本については、都市部の玩具製造とその輸出を検討した。日本の玩具は高所得国向けの輸出志向型工業として展開したことを明らかにしつつ、そのなかで玩具の模型やデザインの意匠における模倣とイノベーションの問題を検討した。近代中国については、中国における蝋燭市場が、西洋の輸入蝋燭が市場に流入したことによってその模倣や商標偽造が起こる一方で、国内で近代的な蝋燭製造が開始されたこと、それによって輸入代替が進んだことを製品の質にも注目して議論した。日本植民地期の台湾については、石鹸市場を事例に、宗主国から植民地に流れ込んでくる近代的雑貨品が政治的な抑圧のなかで「文明への同化」の側面を持っていたことを明らかにした。現代中国については、雑貨品製造が計画経済期にどのような推移をたどりながら改革開放後に発展したのかを浙江省を事例に検討した。 3月14-15日には、メンバーはじめ国内および台湾から研究者を招聘して、慶應義塾大学において国際ワークショップを開催し、これらの課題の報告とディスカッションを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)研究を進めるための具体的な方法として、研究文献サーベイおよび資料(文献資料や画像資料など)の検索と国内外での収集を精力的に行った。 2)研究を開始するに当たり、研究組織全体の包括的な調整を行い、メンバーの役割分担を明確に規定した。 3)研究開始時に研究方向を決める研究会を行い、その後、それぞれの研究の進捗状況を報告しあう研究会を開催して当初の方向性を確認する作業を行った 4)以上を踏まえて、内外の研究者も含めた国際ワークショップを開催し、問題点の明確化を図った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年8月に京都で開催される第17回世界経済史会議(The World Economic History Congress, 2015)に、本研究テーマで応募したセッションが採択されたので、”Small Things and Copy Culture in Global Economic History: From the Perspectives of 19-20th Centuries East Asia" と題するセッションを組織して、メンバーの報告を中心に、その他内外の研究者も加えて、本研究の成果を発表する。現時点で世界経済史会議で組織するわれわれのセッションには、Linda Globe、Chan Kai Yiu、杉原薫、Giorgio Riello、大石高志らが協力者として参加する予定である。杉原薫は19~20世紀におけるアジア間貿易の形成と構造をデータを用いてはじめて明らかにした研究者であり、アジア経済史をグローバル経済史の中に位置づける役割を期待している。Globeは近代中国の雑貨製造を天津の事例から報告、Chanは近代中国におけるマッチ工業の展開を議論する予定である。また、Riello と大石高志は、ヨーロッパおよびインドの専門家としてそれぞれの視点からのコメントを行うことが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
3月14-15日に開催した国際ワークショップの諸経費のうち、平成26年度会計処理の期限に間に合わなかった費用があったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の額は平成27年度に繰り入れて会計処理する。
|