研究課題
輸入雑貨とそのコピー品の氾濫は、様々な地域の経済発展の過程で問題となってきた現象である。本研究では19~20世紀のアジアにおける雑貨に焦点を当てて、輸入に伴って生じる現地でのコピー品製造、模造品・イミテーション品市場の族生、輸入代替・輸出志向型工業化と労働集約的小規模生産の展開などについて歴史的実証分析を行うことを課題とした。初年度には、代表者古田和子が近代日中、分担者・谷本雅之が近代日本、瀬戸林政孝が近代中国、伊藤亜聖が現代中国、平井健介が植民地下台湾の雑貨をそれぞれ担当し、その輸出入、製造、流通、消費者への普及について基礎的な考察を行った。それに基づいて国内および台湾から研究者を招聘して、慶應義塾大学において国際ワークショップを開催した。27年度には、社会経済史学会全国大会においてパネル「「近代」雑貨、模造品市場、工業化:1900-2000年代 東アジアの事例研究」を組織した。さらに8月に開催された17th World Economic History Congressで"Small Things and Copy Culture in GlobalEconomic History"と題するセッションを組織し、海外の研究者も加えて報告を行い、本研究テーマを国際的に広く発信した。28年度にはこれらの学会での成果を踏まえて、研究テーマに対する総合的理解を深め研究活動の総括をした。輸入雑貨のコピー品の氾濫は、歴史上どの地域でも見られた普遍的な現象であり、経済発展の裏面史ではない。人々が日常生活で消費する雑貨を正面から分析することによって、正規の経済発展に付随して、コピーによる「新商品」の生産拡大やシャディー品市場の族生が、それらの人々による広範な需要を通して、その社会に広くて深い文化変容と市場経済の全般的進展をもたらす側面があったことが明らかになった。
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