研究課題/領域番号 |
26380447
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
田原 啓祐 大阪経済大学, 付置研究所, 研究員 (50411393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 通信事業と会計制度 / 郵便事業 / 三等郵便局制度 / 郵政事業と戦前昭和期の日本経済 |
研究実績の概要 |
「日本近代郵便事業の経営実態に関する研究―創業から戦後までの展望―」を課題として研究を進めていった。 両戦間期の郵政事業は飛躍的な成長を遂げている。例えば同時期に郵便局所は2,700局増加、郵便利用数も30億通増加、簡易生命保険をはじめとする新規事業も創業するなど業務も多様化し、通信事業収支は膨大な黒字を生み続けた。数字上はまさしく順調な成長であったと言えるが、地方の三等郵便局は、大戦ブームなど景況の変化から取り残される傾向にあった。世の中が物価騰貴の状況にある中で給与が据え置かれ、人員増加がなされないまま多様化する業務への対応を強いられた三等局員にかかる負担は相当なものとなり、局員の職離れは深刻な問題となった。三等局局員の待遇が改善しない要因は、通信事業が一般会計の管理下にあり、中央政府の財政収入源となっていたためで、その高い収益はある時は軍事費増強、ある時は緊縮財政政策時の財源として、政府に吸収されたためである。 一般会計下での通信事業経営が深刻な問題を露呈したことで、通信事業特別会計への移行の気運が一気に高まった。昭和6年9月「通信事業特別会計制度調査会」設置により特別会計の実現を目指して逓信省が一体となって突き進む態勢が整い、昭和8年3月20日に通信事業特別会計法案が成立した。これにより、逓信省が管轄する通信事業(郵便・電信電話・郵便為替貯金およびこれらに付帯する業務)は初めて独自の会計制度を持つに至った。 本年度の研究は通信事業特別会計が採用された後、逓信事業にどのような影響を及ぼしたのかについて分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は平成26年度の研究課題「明治期日本における近代郵便事業の展開と在来・移植技術」のための海外(イギリス)における資料収集・調査活動ができなかったため、平成27年度の研究課題「戦時・戦後における郵便事業政策の連続と断絶」を先行して進めていった。研究内容は学会において中間報告を行ったが、成果をまとめた論文は次年度発表する予定である。 また、本年度出版社より関東大震災時の郵政事業の活動をテーマとした著書の執筆依頼を受け、調査及び執筆を開始している。両研究の同時進行により、研究の進展がやや遅れているが、著書執筆のための研究は、本研究の進展に大きく貢献するものであるので、併せて次年度に成果を発表したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、平成27年度の研究課題を先に進めたので、次年度はその研究内容を論文として発表し、後回しにした平成26年度の研究課題「明治期日本における近代郵便事業の展開と在来・移植技術」を進めていく。 具体的には、郵政博物館に所蔵されている前島密(日本郵便の創業者)の文献・回顧録や郵便創業期の未調査史料を検討し、宿駅制度や飛脚業者など江戸時代の通信システムが変容しながら近代郵便制度に取り入れられていった過程を明らかにしていく。また、欧米の郵便史研究に依拠しながら、欧米の近代郵便制度がどのように日本近代郵便に取り入れられたのかについても検討するため、海外(イギリス)の資料収集・調査も積極的に勧めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本職の都合により、国内出張及び海外出張を行う機会が制限され、十分な資料調査及び収集活動を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究活動の遅れを取り戻すべく、次年度は積極的に資料調査及び収集活動を行っていきたい。
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